第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
朝になって、結局中也さんのせいで寝付きが遅くなった私は、まだ顔から熱が冷めていなかった。
けれど、そんな中でも違和感に気が付く。
『あ、れ……?中也さん?』
中也さんの気配が、家の中に無い。
どこを探しても、中也さんがいない。
『!これ…』
リビングのテーブルの上に、恐らく彼が書いたであろう書き置きを見つけた。
急いでいたのか少し走り書きになっていたが、内容ははっきり私にも読める。
今日の明け方に緊急事態が起こったようで、首領から緊急招集がかかったそうだ。
それでそっちに行くことになって、いつ帰れるのか分からないという事。
そして、組合が動き始めた為、あまり横浜の街を動き回るなという事が書かれていた。
『緊急事態…?なんで首領も中也さんも、そんな時に私を頼ってくれないの?』
書き置きをテーブルの上に戻して、急いで支度をして、中也さんに会うための口実まで作って扉を作る。
私を置いて大事な事隠してこそこそするなんて、許さないんだから。
居場所なんて隠してたって無駄なんだからね。
身支度を整えて扉を開くと、うまい具合の高度から横浜の街が見える。
そしてすぐそこに見つけた黒い集団の中に、大好きな中也さんを見つける。
扉から勢い良く飛び降りて、能力なんてなしに中也さんに向かって一直線に降下する。
その様子にいち早く気付いた中也さんの周りの黒服の男達が銃を構えるけれど、私に気が付いたベテランそうな黒服さんと、近くにいた黒蜥蜴の広津さん、銀さん、立原がすぐさま止めに入る。
そして流石にその様子に気付いた中也さんがこちらを振り向いた時。
「!!ち、蝶!?お前なんでここに……って、馬鹿!!スカート押さえろスカート!!!」
『……っ、知らない!馬鹿は中也さんの方でしょ!!』
タイツを履いてるのにスカートの心配するなんて、随分余裕のある中也さんに真正面から突撃しようとした。
しかし、すぐに中也さんの異能で落下スピードを緩められ、彼の腕に抱えられる。
「馬鹿は俺じゃねえだろが………何でここに来た、うろうろすんなっつったろ!」
少し怒ったような口調で私を叱るように言う中也さんに、ちょっとだけ身体をビクつかせた。
『……中也さんの方が馬鹿だもん。もういい!私立原といる!!』
「なっ!!?」
呆気に取られる中也さんの腕を振り払って、立原の背中に隠れた。