第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「おい蝶…そんなに俺と寝たくないんなら、無理にこっちで寝なくても」
『黙ってて、こっち向くのも禁止』
「すんませんっ!!」
中也さんのベッドで壁に身体を向けて、中也さんから一番遠いところに横になる。
この人の冗談、冗談っていうレベルのものじゃない…今だってまだ熱が冷めない。
「……でもお前、本当に自分のところで寝なくてもいいのかよ。そうすれば俺の事気にしなくていいんじゃ…………あああ殺気を飛ばすな殺気を!!」
『…………一緒に寝るの、嫌?』
素直に言えない私は、こうやってずるい聞き方をする。
中也さんがそんな事思ってないなんて分かってて、こういう聞き方をする。
「嫌なわけねえだろ……だから、俺じゃなくてお前が嫌なんじゃねえかって…」
『中也さんの鈍感モンスター。分かってくれない中也さんキライ』
「ああ!?鈍かっ……嫌い!!?」
反抗期の娘を宥める親バカな父親のように…というよりはエリスちゃんにそう言われた時の首領のようにガバッと上体を起こしてこちらを振り向く。
「…………ああー、なんだよ。悪かったって…ただあまりにもお前が良い反応してくれっからつい」
『……違う。やっぱりキライ』
「違ぇのか!!?」
頭を抱えて唸る中也さんに、仕方が無いので可愛げもなく端的に言葉にした。
『別にそんな事ない…それなら私、ここに来ない』
「ここに来ねえって……」
中也さんからの目線を感じる。
それにどうしても恥ずかしくなって、フン、と言わんばかりに布団をギュッと掴む。
『………っ!?へ、っ…な、なななっ!!?』
するとすぐに腕を掴まれ、中也さんの方に身体を向けられて、中也さんの顔が目の前に寄せられた。
突然の事態に拗ねたような態度を取れなくなって、中也さんはそうなることが分かっていたかのようにして溜息を吐く。
「お前、それなら最初からそう言えって……割と本気で焦るから」
『き、気付かないのが悪いの!だ、だから早く離れっ…!!』
必死に恥ずかしさを隠そうとしてるのに、中也さんは私の腰に手を回して抱き寄せる。
「何が早く離れろだ、んな事ちっとも思ってねえだろ。怒ってねえ上にあんな言い方する時は、だいたい俺からくっついて欲しい時だろが」
図星すぎて身体が硬直する。
何で分かるのこの人は。
「お前はその変分かり易いからな…もう寝んぞ」