第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「俺の事が嫌じゃねえんなら、もう帰らないなんて言うな…こんな暗くなってまで、一人でいるんじゃねえよ」
『だって、言えなかったから…他の人にされたとか、中也さんにしてほしいとか』
聞こえていたのか、中也さんはゆっくりと私の肩から顔を上げて、私の目線に合わせるように顔を近付ける。
空は晴れてるから、月の光が十分に行き届いて、一層中也さんを際立たせていた。
「……んだよそれ、それなら尚更帰ってこねえとしてやれねえだろ」
『帰ったってそんな事言えないよ。中也さん以外の人にされたなんて、とても私からは…………!まさかあの人…っ』
よくよく考えてみて、ようやく気が付いた。
やけに突然私に覆いかぶさってきて、我慢出来ないと言いつつも暫くキスはしなかったじゃないか、彼は。
それに中也さんは、私にする前に、あの人みたいに偽善の為にはこんな事をしないと言った。
きっと中也さんは、彼の行動の理由に確信を持って言ったんだ。
『…どうしよう中也さん、私組合の人に助けてもらっちゃったよ』
きっと、中也さんがそこまで来ている気配を感じ取ってあんな事をしたんだ。
私の口からじゃとても言えない、それを知っていたから。
自分から悪役を買って出たのか。
「知ってる。でもあいつは組合としてではなくあいつ個人としてそうしたかったんだろ…悪いとか思ってんじゃねえぞ、そもそもあいつが原因なんだからな。お相子ってやつだ」
『うん。でも、今日何で中也さんここに来たの?もう東京でのお仕事終わったって言ってたような…』
中也さんは酷く顔を赤くして、頭を手で押さえながら理由を説明した。
「お前が連絡取れねえようにしてっから、烏間さんに学校にいるかどうか確認したんだよ。そしたら俺んところに担任が来て、ここの山まで連れ去られたってところだ」
『え、なんでそんないきなりの事態に中也さんがついて…?』
理由もなく誰かの行動に従ったりしないはずだ、この人は。
「…………お前が他の男に襲われてっかもしれねえって言われたからだよ」
『襲われる訳ないでしょ私が。何の為の銃や護身術だと思って…っ、んっ……ぅ、っ』
一瞬でまた唇を奪われて、少ししてからまた離される。
『な、ぁ…っ……なん、でっ…』
「言ってる側から俺に襲われかけてんだろ阿呆」
『え、襲っ!?えっ!!?』
中也さんに溜息を吐かれた。