第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
『中也さん…?なんでそんな事……』
「お前あいつにされた時にはしたんだろ…俺に無理矢理されて、何で跳ね除けねえっ、してくれねえと俺は…………俺はお前を知らねえところで傷付けてるかもしれねえじゃねえか」
この人は、私が中也さんにされて嫌だとでも思っているのだろうか。
それとも、私が中也さん相手に、嫌なことをされても抵抗しないとでも考えているのだろうか。
中也さんが私を思っての事になら、確かに何をされても抵抗はしないだろうし、しても中也さんには意味がない。
だけど私は、本当にして欲しくなかったら、泣き喚いてでもやめてと言う。
『…私がそうしたかったから。中也さんと、同じだよ』
「………そんな事ばっか言うから、俺にこんな事されんだぞ」
『いいよ。中也さんなら』
「よくねえ、もっと大事にしろよ阿呆…」
中也さんの背中をよしよしと撫でる。
やっぱり私の事を、そういう風には見てくれないの?
でも、なら何でいきなりキスなんて…
『私前にも言ったじゃないですか。中也さんとなら、…したい』
「俺とならってお前は言うがな。俺はその何倍もそう思ってんぞ…お前には到底話せねえような、黒々としたもんを俺はもってる」
私の何倍も、そう聞いて背中をさする手を止めた。
私の何倍も?
私には話せないようなこと?
私の何倍もって…もっと“こういう事”をしたいって事?
「だから、あんまり俺を煽るようなことを言うんじゃねえ。本当に、止められなくなればお前の事を傷つけかねない」
煽るようなことと彼は言う。
確かこの前も言っていた。
私が中也さんに想いを伝えようとした時に。
『私嫌な時なら嫌って言う。そしたら中也さん、やめてくれるでしょ…それじゃダメなの?』
「俺が相手で言えんのかよお前。……それに多分、歯止めが聞かなくなったらそれも聞いてやれなくなる」
サラリと耳元から髪に指を絡ませられ、肩に力が入る。
『言え、ます……だってそうしないと、中也さんまた泣いちゃうから』
「!……俺が泣くわけねえだろ馬鹿野郎」
『ちゃんと言われた通り、嫌だったら…怖かったら抵抗するから。中也さんになんて勝てっこなくても、ちゃんと嫌だって意思表示、するよ』
背中を再びさすってみるも、肩に出来る涙の染みが乾く気配はない。
私にちゃんと弱さを見せてくれる中也さんに、心まで暖かくなった。