第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「……ったく、酷い馬鹿力だ。あと一応言っておくけど、あの子は凄い力で俺に抵抗してたからね。蝶ちゃんの事責めたりしないでよ?」
「抵抗?…あいつが?」
「そうだよ、キスした直後に思いっきり跳ね除けられちゃったし、さっきだって本気で押さえ付けなきゃやばかったよ……っと、そろそろ君怖いから帰るね」
トウェインさんの気配が消えて、中也さんの視線がこちらに刺さる。
「……蝶」
『知らない!聞きたくない!!』
蹲って、暗い時間なのに喚き散らして、中也さんが一歩一歩近付いてくる振動を肌で感じ取って…その度に身体が震えた。
「俺はお前と話がしたい」
『中也さんの顔っ、見れない……話なんて出来ないっ…だって、だって私、は…?』
いとも容易く両腕を動かされて、彼の元へと引き寄せられた。
すぐに中也さんの腕も回ってきて、力強く抱きしめられる。
『はな、してよ…なんで私の事なんか心配するの』
離してなんて思ってない。
抱きしめられて、拒絶されなくて、寧ろ嬉しく思ってる。
暖かいって思ってる。
「……離して欲しけりゃ抵抗してみろよ。言っとくが、俺はあいつと違って偽善くせぇ事の為なんかにこんな事はしねえぞ」
『なんのこ…っ!?ん、うぅっ…………っ、ふ…』
啄むようなキスが、おとされた。
肩を上げて強ばらせて、突然された驚きと段々頭が理解し始める羞恥に、中也さんの肩に手を置いてしがみつく。
後頭部を手で押さえられて、何度も何度も私の息が持たなくなった頃に短い息継ぎをさせて、触れるだけのキスをいっぱいする。
『ん、っ……ふぅ、っん…、っ!』
最初恥ずかしくて目を瞑っていたのを、恐る恐る開く。
すると、いつからそうしていたのか、中也さんの瞳が私を捕らえて離さない。
頭が、身体が、心が、甘く蕩けるようなキスを…目が座ったような視界で中也さんを捉えながら、中也さんにされるがままに、何度も何度も唇を交わした。
『ぁ、っ…ちゅ、やさん……、な、んで』
唇を離されて、キスの真意を問おうと中也さんを見つめる。
すると中也さんは私の頭を撫でて、またギュッと抱きしめる。
そして自身のおでこを私の肩につけて、少し肩を震わせて、また少しだけ涙ぐんだような声で言った。
「んなもん、…俺がそうしたかったんだよ…っ、何で抵抗しねえんだ、お前は!」
どうして中也さんが怖がってるの?