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第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ


私が仮に捕まったとしても、貴方は助けようとしてくれますよね。
……私が中也さん以外の人に口付けを許してしまったとしても、来てくれますよね……?

「んなもん当然だろ!!つか何で捕まる前提で話進めてんだお前!」

『…中也さん、私、今日帰らない。ごめんなさい、ちょっと中也さんと話す余裕、ない』

「ああ!?なんで帰らねえなんてっ……おい!蝶っ!!」

一方的に電話を切った。
携帯の電源も落として、あの人の声を聞かないように…

だって、言えないんだもの。
貴方に好きと言っても伝わりきっていないのに、他の人にキスされて…嫌だったなんて。

中也さんの顔なんて見ちゃったら、私がどうなるか分からない。

この間みたいな、あんな特別な事情がある時でもなければ、自分からキスなんて強請れない。

『意気地無し…』

今日は探偵社の社員寮の方で過ごそう。
社長のおかげで、まさか本当にそっちに行くことになるとは思わなかったけど、本当に助かった。

『………明日のお弁当の材料買って帰ろ』

誰も聞いていないのにぽつりと呟いて、屋根の上で自主学習をした。




「ねえ蝶ちゃん、いつまでそこにいるの?」

『えー…ああ、気が向いたら私も帰るよ。ありがとう神崎ちゃん』

英語と理科のテキストを読み漁っていれば、下から声がかけられた。
恐らくカルマ君あたりが教えたのだろう、ここじゃないかって。

「気が向いたらって、向くの?まさか明日までここにいるなんてこと…」

『心配しなくても大丈夫だよ!私明日のお弁当の材料買ってから帰るし。明日も作らなきゃだから』

中也さんに会いに行けないくせに、離れきれなくてそんな事しか考えられない。


放課後になって、もう皆帰ってしまった。
先生方にも挨拶だけはして、暗くなってきたけど気にせず屋根の上に寝そべっている。

それにしても、全くもって動く気になれない。

おでことかほっぺたとかとは違う、一番特別な意味をもつ唇へのキス。
中也さんにしてもらった時のことなんて全然思い出せなくなって、頭の中をあの人が占領していく。

私の頭に、上書きされていく。

『…どーしよ、こんなのばっか考えてる暇ないのになぁ』

私自身は勿論だけど、何よりこれから起こるであろう抗争に負けないようにって時に。

「あーあー、やっぱりまだ気にしてた?」

私を悩ます張本人の声が響いた
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