第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
言われた途端に寒気がした。
「君が来てくれれば悪いようにはしないよ。言っただろう?僕は君の事が好きだしね」
なのに、敵なのに私の事を安心させようと頭を撫でる彼の手は酷く優しかった。
「……君の一番の心残りはあの男なんだろうけど、そこさえ踏ん切りをつければ椚ヶ丘の方には手を出さない。それは約束しよう」
『私が、離れるわけないじゃないですか…あの人だけはとらないで……っ、私からとらないで…』
子供のように本音を漏らせば、ただあの人が私の元にいなくなる事が怖くなって、組合の人なのにトウェインさんに訴えかけていた。
「ごめんね、あの男が組合に勧誘されてない上に入らない以上は、それは無理な話だよ」
トウェインさんは立ち上がって、私の前に移動して膝をつく。
そして下から私に視線を合わせて、苦しそうな顔で言った。
「今回みたいに俺単独でなら君には勝てないし、ここの皆にももう危害は加えないでいてやれる。でも、俺は君に思い入れがあるからいいけど…他の奴らがここに来ると、それもどうなるか分からない」
『分かってます、そのくらい…でも、私中也さんの事になったら諦め悪いんで。死ぬ気で撃退しますよ。』
「そう…でもまあ、数日中はまだ俺は一人で蝶ちゃんにプロポーズしに来るからさ!」
プロポーズすると陽気に言うトウェインさんに、どうしても顔を背けてしまう。
私はこの人に、ここまで言ってもらっていいような人間ではないはずだ。
それに真っ直ぐにそんな想いを伝えられ続けると、少し押しに弱い面のある私としては酷い扱いにも出来ないし。
『来なくていいっ……』
「もー、恥ずかしがってちゃ説得力ないって。俺の事は…諦め悪いし泣かせちゃったし、嫌いかもしれないけどさ」
『…い』
「ん?」
私が泣いた事にそんなに苦しそうな顔をするこの人は、本当に私に思い入れがあるのだろう。
そんなに私を想ってくれている人に、そんな顔はしてほしくない。
『……だから、嫌いじゃ…ないよ』
「!…ねえ、チューしていい?」
『も、もうダメですから!!怪我増えますよ!?』
「それはおっかないね」
トウェインさんを校舎の出入口まで案内し、外に出た。
彼は麓まで車で来ていたらしく、山を下りていくそうだ。
「じゃあねー蝶ちゃん!!また来るよー!!」
「あの人まだ言ってるよ」
『もう…!!』