第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「……ごめんね。服は自分で脱げるから、それ以外だけお願いしていい?」
手首を掴む手が緩められ、声も柔らかくなった。
恐る恐る目をそちらに向けると、申し訳なさそうに微笑んでいるその人。
『は、い…あの、名前、聞いてもいい……ですか』
「!うん、マーク・トウェイン…トウェインって呼んでよ」
『トウェイン…さんっ、ん……っ、何…?』
名前を呼べば、これもまた突然に首元に抱きつかれた。
まるで私が中也さんにするみたいにこられるわけだが、首は弱いからすぐに身体が硬直してしまう。
なんとか擽ったい声をあげずに済んだものの、なんでこうなっているのかが分からない。
「ううん、可愛いなあって思って。ねえ蝶ちゃん、トウェインって、呼び捨てで呼んでよ。あとそんなにかしこまらないで」
『そんなっ、なんでいきなり…ひぁ、っ……』
「…言ってくれるまで離れないよ。それに何やら君は首が敏感らしいし『い、言う!言うからぁっ!』そりゃ嬉しい」
なんでこんな事になってるのか分からないのに、初対面の明らかに年上の男の人から呼び捨てで敬語禁止にしてくれだなんて言われて余計に頭が混乱する。
『と、…トウェイン……さっ…は、離して……』
「初な感じでいいね。さんって付けかけたけどまあ合格!」
身体を離したかと思えば、頭を柔らかく撫でられる。
ただでさえさっき恥ずかしかったのに、中也さん以外の男の人からこんな事され慣れてないし、また顔に熱が集まった。
『な、なな何言ってんですかっ…ほら、早く消毒しますから、っ』
言ってる最中に、トウェインさんは上のシャツを脱ぐ。
元々ラフに羽織っていただけのような格好だったため、それはすぐの事だった。
思わず彼の上半身から目を背け、伏し目がちに羞恥に耐える。
「……どうしたの?そんなところで赤くなっちゃって。消毒してくれるんじゃなかったっけ」
『っ、…〜〜〜しますよ、しますっ』
もうヤケだ。
あまりトウェインさんの身体に目をいかせずに、患部だけに焦点を当ててやればいい。
「いたっ!いったい!!…蝶ちゃん、消毒ってかなり……痛っ!!?」
『貫通させたの肩だけですし、他は掠らせただけだったはず…、はい、一応肩だけ包帯巻いときましたから、後は…………』
キュ、と肩周辺に巻き付けた包帯を傷口に響かないよう結んでから、残りの作業をしようとした。