第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
「ほう…いくら君が強がっても、社員が皆消えていなくなってしまえば会社は成り立たない。そうなってからでは遅いぞ」
フランシスの言葉に寒気が止まらない。
嫌な想像が頭から離れない。
「御忠告、心に留めよう。帰したまえ」
「また来る」
フランシスはアタッシュケースを閉じて立ち上がり、ナオミさんは手を二回叩いて皆に呼びかけた。
「お客様のお帰りでーす」
「はーい、お送りします」
案内係の賢治さんが組合の三人を連れて行く為、面談室に入る。
「明日の朝刊にメッセージを載せる。よく見ておけ…俺は欲しいものは必ず手に入れる」
賢治さんについて面談室を出る直前、社長に向かってそう言って面談室から出た。
「……?おや、君は…」
そして事務室を通る際に私の存在に気が付き、こちらへ歩み寄ってくる。
寒気が止まらなくて動けずにいると、座っている私の前に傅いて手を取り、挨拶としてキスをおとした。
「まさかまた君と会える日が来るとはね。それにまたこの街で会えるだなんて…」
『っ、は、なして…もう来ないで!』
なんとか手を振り払ってはたけば、フランシスは驚いたような顔をした。
「おっと…そうかそうか、“あれ”もないし、強気になれるのか」
『んっ、…!?』
私の耳元に口を寄せて、言葉が紡がれる。
その言葉でフランシスが離れた直後に椅子から崩れ落ちて、荒くなる呼吸を必死に整えようと肩で息をする。
「蝶ちゃん!?」
「白石!!」
太宰さんと国木田さんが私に駆け寄るが、必死な声も聞こえない。
あの男の顔が脳裏から離れてくれない。
『や、だっ…やだ、やだぁっ……!!』
「どうしたんだ蝶ちゃん!さっきの男と何があった!?」
一人になりたい。
でも一人でいたくない。
何よりもあの人に会いたい。
でも会いたくない。
頭の中を、先程フランシスの言った言葉がグルグルと回る。
『太宰さ…っ、あの人に会いたい、離れたくないっ!でも、会いたくない……なんで、なんであいつが、っ…』
「あの人ってあいつかい!?頼む、教えてくれ…君の怖がり方が尋常じゃないっ、頼む…」
『……っ、……なの』
声を振り絞って、なんとか言葉にする。
「え…?」
『っ、だからっ……あの人なの!…四年前に、私を連れ去ったの………なんで、またっ…?』
____また、迎えに来るよ____