第5章 新しい仲間と新しい敵と...ⅲ
ヘリから降りてきたのは話の中で出てきた組合の長。
そしてその人について二人の構成員が降りてきた。
私の様子がおかしいのに気付いたのか、太宰さんは私を隠すように前に立ち、国木田さんと一緒に相手の要望を聞き、社長と面会をさせる事にしたらしい。
テーブルの上に大きなアタッシュケースを置いて、その人と社長が向かい合って椅子に座る。
相手側には二人の構成員が後ろに立ち、こちら側にはナオミさんが控えている。
「やあやあはじめまして、プレジデント福田……福田?」
「福沢」
「それだ。ところで、ヘリを道路に止めたのはまずかったかな」
「外つ国の方々が、遠路遥々御苦労だな。して、要件は?」
ナオミさんが紅茶を淹れ、相手の前に差し出した。
「…俺のことは、フランシスと呼んでくれ。北米で、組合という寄り合いを束ねている」
紅茶を一口飲んで、フランシスと名乗る男が自己紹介をした。
組合…その長が、この人?
嫌な汗が止まってくれない。
「フランシス殿。貴君は懸賞金でポートマフィアを唆し、我々を襲撃させたとの報告があるが…誠か」
「ああ、あれは過ちだったよ」
笑顔で彼はそう言う。
「まさかこの国の非合法組織が、あれほど役立たずとは…謝罪に、いい商談を持ってきた」
その言葉に頭がきて声を出しそうになったが、太宰さんに目で制される。
「この会社は悪くない、街並みも美しいしな。そこでだ、この会社を買いたい」
フランシスはアタッシュケースを明け、大量の札束を社長の前に提示する。
「勘違いはするな。俺はこの街にある全ての会社を買い占めるくらいの金はある。家屋も景色も興味はない…あるのは一つ」
「まさか…」
「そうだ。異能開業許可証を寄越せ」
社長だけでなく、会話を聞く全員が反応する。
あれはお金なんかで引き渡せるような代物ではない。
四年前だって、森さんはあれを手に入れるのに苦労した…織田作さんも太宰さんも、安吾さんも、あれにいっぱい振り回された。
「断る」
「何だ、これでは足りんか?ではこれも付けよう」
フランシスは自身が付けていた時計を札束の上に置いたが、それでも社長は断る。
「命が金で買えぬように、許可証と変えられるものなど、存在せぬ。頭に金の詰まった成金が、易々と触っていいものではない」
社長が言った途端に、何故か私は悪寒を感じた。