第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
最後の呟きはぽそりと言っただけのものだったのに、中也さんには伝わっていたらしい。
甘えてろ、なんてそんな事…いや、それだけじゃない。
なんだかここ最近、本当に私ばっかりしてやられてる気がする。
中也さんが今までにしてこなかったような事を楽しんでするようになっちゃってるから、心臓だってもちそうにない。
それくらいに、むこうから色々と向かってこられると、恥ずかしい。
「失礼すんぜ烏間さん、ちょっと椅子貸してもらえねえか。こいつ多分身体の調子悪いから」
職員室に入れば他の子達は付いてこなくなった。
というか、なんで職員室?
それに、私の身体の調子が悪いなんて、なんで気付いてるの?
烏間先生が椅子を二つ用意してくれ、片方の椅子に中也さんが私を下ろす。
「……蝶、首以外で頼む」
『…』
仕方なく、中也さんが流石に恥ずかしそうだったので、椅子をピタリとくっつけて腰に腕を回した。
烏間先生の方を向くのは恥ずかしかったから、また中也さんで顔を隠したのだけれど。
「あー…標的から話は聞いたが、能力の事だったな」
「そうだ、それに関して烏間さんに頼みがあってな」
中也さんが職員室に来た理由はそこだったらしい。
イリーナ先生も殺せんせーもいない職員室で、中也さんは声を低くして言った。
「まず、こいつがちょっとでも血を流すか能力を使うかすれば…そんでもってそれが長引くような相手が現れた時は、知らせてほしい」
『!!ち、中也さん!それっ…』
いいからお前は黙ってろと制され、大人しくする。
「それは、すぐに片が付かなければ、白石さんとその相手の相性が悪いからか?」
「ああ、いや。基本的にこいつが本気を出して勝ち目のねえような奴は滅多にいねえんだが。…知ってのとおり、蝶は傷の治りが早い。それで俺は医療機関に連れて行かねえよう頼んだんだが」
中也さんは、まだ烏間先生に伝えていなかった事を正直に話した。
「まず一つ、蝶の能力の中には、こいつの血液を消費するものがある。そしてそれを使いすぎると勿論血が足りなくなるんだが、ここでもう一つ問題があってな」
「…それが、医療機関に連れていくなと言った理由なのか」
「ああ。下手にこいつに血液型が合うだけの奴の血を輸血すりゃ、蝶の血液が凝固しちまうんだ。今のところ、俺以外に輸血出来る人間が、まだ見つかっていない」