第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
今から思えば、あれですぐにテレポートを使えば良かった。
けれどまだ皆の前で能力を公言していない私は、それを使う勇気がなかったのだ。
『…………あ、れ…?』
頭から、落ちたよね…?
「____…チッ、惚けてんじゃねえぞお前!」
ふわりと横向きに抱えられて、衝撃無く地面に着地するその人の声が響いた。
『……あ…』
「心配して裏山の方に行ってみればいきなり能力使って移動し始めるわ、扉作って校舎まで行こうとするわで焦って異能使って来てみたんだよ…もうちょっと危機感持て」
そうか、異能使って、私が落ちない内に助けてくれたんだ。
『はぁい…』
頭が上手く働かなくて、心配して怒られているはずなのになんだか頭がぼーっとしてる。
「分かってんのかよ…お前、また何か薬浴びたんだろ?判断力鈍ってんじゃ………っ、蝶?」
今あった事なんて忘れて、ただそこに大好きな人がいるってことを確かめようと、抱えられたまま首元に抱き着いた。
『…………良かった、中也さんいる。私、どこにも連れてかれなかった』
「おい、連れてかれなかったって…!そうか、そうだな……よく帰ってきてくれた」
私の背中を優しく撫でて、ギュッと抱きしめてくれる。
中也さんの存在を肌で感じ取って、そこにいるっていう事が分かって、ようやくとめどない感情が溢れ出てきた。
『うん、っ…中也さんに会えたよ』
「お前、嬉しいのかどうなのかどっちかにしてくれよ。……泣かれちゃ俺が悪いことしてる気分になんだろ」
涙を指で掬って、私を落ち着かせるようにゆっくりと話す。
そんな中也さんに余計に安心して、涙が全然止まってくれない。
『嬉しいけど、怖かったの。水と触手はもうやだよ…』
「分かってるさ。…でもまあ、俺も水着は見てえかもな」
中也さんの呟きにきょとんとして、思わず中也さんの目を見た。
「あ…いっ、今のは忘れろ!何でもねえから!!」
『…海の家で食べ歩きなら行く、一緒なら、行く。…………また買っときます』
「はっ、?え、何で怒んねえんだよ、さっき太宰の野郎にはあんなにっ…」
太宰さんとの一部始終を見ていたのか、中也さんは酷く慌てた様子だった。
『中也さんに言われたら、そうしないとダメじゃないですか。私の身体はそう動いちゃうんですから』
「それじゃ、俺下手な事言えねえよ…」