第2章 暗闇の中で
その様子を見ていた片岡さんも話に入る。
「でも、指輪の割にはシンプルなのね…どっちかっていうと、本来は指輪として付けるものだったりする?」
鋭い。
『正解。本当はただの指輪なんだ。でも、首にかけてた方が汚れないし。』
「汚れないしって…そんなに気に入ってるんだ?」
まあ、私の言う汚れっていうのは、色んなものを含んでるんだけどね。
『うん、私のお気に入り!』
「でもさぁ、こんなにシンプルなのってあんまり見かけないよね~……もしかして貰い物とか!?」
『あ、当たり。』
「デザイン的に、選んできたのは男だと見た!」
やけに張り切って会話に参戦する中村さん。
あれ、何だか猛烈に嫌な予感がしてきた。
『男って…』
とりあえず苦笑いを浮かべてその場を流す。
「あ、こういうデザインのやつ、アレじゃないですか?結婚指輪とか!!」
突拍子もなく飛んできた奥田さんのこの発言に、クラス全員が吹き出した。
勿論、それは教室にいた先生三人も例外ではない。
「いつもらったの?その指輪、」
気になるのか、初めて話しかけてくれた速水ちゃん。
『うーんと……9歳の時だったかな?』
「「9歳!?」」
「そ、そんな高そうな指輪を!?」
『うん、だって相手年上の人で、もうとっくに働いてる人だったし。』
嘘は言ってない。
ただ、ちょっと色々伏せてるだけだ。
「年上の人から9歳の子に、これだけ高価そうな指輪をプレゼント、ねぇ。年上っていうけど、その時のその相手、何歳だったの?」
挙句の果てにはイリーナ先生までもが探りを入れ始めた。
『16歳だったと思います。』
16でどれだけ稼いだらこんな指輪買えんだよ!!とツッコミが溢れる。
でもしょうがないよね、事実だし、実際それくらい稼いではいたし。
「まあでも、そんな年のものなら結婚指輪とかじゃないかぁ…ちょっと残念。」
『多分、違うと思うよ。………本当、これが結婚指輪だったら良かったのになぁ、』
私の発した言葉は、教室に静寂をもたらすのには十分だった。
『え、どうしたの皆、静かになっ…て…………あ、』
カルマ君と殺せんせーの顔を見て、ようやく気付いた。
やばい、これは大変まずい状況だ。
やってしまった……!!!
「そっかぁ、好きな人から貰った指輪だったんだぁ?」
『~~~~~!!内緒です!!』