第2章 暗闇の中で
「無論だ。元より、この護衛任務を承諾した理由はそこにある。」
『じゃあ最初から、私のために…?でも、他の皆さんもそれだと迷惑なんじゃ!』
「探偵社は皆、白石 蝶に当たり前の学生生活を送って貰おうと考えて、この依頼に返事をしたのだ。」
つまりは、私を学校に行かせる為にこの仕事を受けたという事。
戸籍がなく、この地球上のどこにも、“生きている記録の無い”私が学校に行くために…
ただの仕事じゃなくて、私の為のプレゼントのようなものだったのだ。
『あ、ありがとうございます!ではお言葉に甘えて、修学旅行、行きますね!』
こんなに嬉しいこと、滅多にない。
「ああ。楽しんでくるといい。」
短いながらも、ちゃんと気遣いの伝わる社長の言葉。
すぐに電話は切れちゃったけど、探偵社の皆の心遣いが暖かく感じられた。
『……殺せんせー、いるんですよね?ありがとうございます。』
「ヌルフフフ、何のことでしょう?修学旅行、楽しみですねぇ?」
『はい!生徒達の安全は私に任せて、暗殺されて下さいね!』
「それは頼もしい。ですが、殺せますかねぇ?」
顔を緩めて笑う先生に、私も笑い返した。
教室に戻ると、茅野ちゃんが慌てて駆け寄ってくる。
心なしか他の子からの視線もちらほら感じる。
「社長さんからだったんだよね?何かあったの?」
心配そうな茅野ちゃん。
さっきから何なのこの子、可愛すぎるでしょ…私よりも背高いけどさ。
『えっと……修学旅行、行ってもいいって。』
「本当!?よかったぁ~…じゃあ、同じ班ね!!決定!」
『うん、ありがとう。』
ちらちら感じていた視線はどうなったのかと思い、周りを見てみたら、皆ホッとした様子で胸を撫で下ろしていた。
もしかして、心配してくれてたのかな…?
自惚れてるだけかもしれないけれど。
話の区切りが良くなったところで、こっちに来たのは倉橋ちゃんと矢田ちゃんだった。
「ねえ、今日ずっと気になってたんだけどさ!」
「それ、ネックレス?どんなのか気になるし、見せてよ!」
『ネックレスって、これ?』
朝つけてきたリングに通しているチェーンを見せる。
「そう、それそれ!」
『いいけど、これはネックレスっていうより…』
「…わぁ、指輪だったんだ!」
『うん。』
目が輝く二人。茅野ちゃんまで目キラキラさせてるけど。