第1章 蝶と白
__武装探偵社 事務所__
『おはようございます!』
「おはよう!今日もいい自殺日和だね!」
何だ、いい自殺日和って。
疑問に思うが、誰もそこには触れない。
まあ、太宰さんだし。
「おはよう」
「おはようございます」
次々に、挨拶を返してくれる。
そして、私の今日の格好を見るやいなや、すぐさま騒がしくなった。
「おお!そういえば今日からだったな!」と国木田さん。
「似合ってるよ。あんたのそんな格好見れるとは、私達は幸せだねぇ。」と与謝野先生。
「あ、それが制服なんですね〜」朝だからか少し眠そうな賢治さん。
そう、私が今日から毎日着るのは、東京の進学校である椚ヶ丘中学校の制服なのだ。
なんでも、月を破壊した超生物の暗殺のためだとか。
そこで、武装探偵社にも依頼が来たようで、年が丁度15歳になる私が入学することになったらしい。
「勉強の方に関しては、進学校らしいが…君くらいの実力があれば大丈夫だ。」
訳あって学校には通っていなかった私だけど、ポートマフィア時代からの勉強や、探偵社で太宰さんと国木田さんに教わった分で、一応勉強の内容を理解しているつもりだ。
『はい!』
元気よく返事をしたところで、左手を前に出す。
すると、左手の前に現れる、沢山の白い蝶…蝶が集まり、やがて一つの扉になった。
そう、扉だ。
ここで、思い出してみてほしい。ここは横浜……つまり、東京のある椚ヶ丘からは、かなりの距離にあたり、とてもじゃないが通学をするのは厳しい。
そこで活躍するのが私の能力の一つである、空間移動。
名前の通り、空間を移動すること…テレポートのようなものが出来る。
視覚に捉えられる範囲であれば扉を用意する必要はないのだが、それ以外に移動する場合はこの扉をくぐらなくてはならない。
『じゃあ、行ってきますね!』
満面の笑みで皆に言うと、手を振り返して行ってらっしゃいと口々に返してくれた。
社長と乱歩さんもいてくれたら良かったのにな。
なんて贅沢言えないけれど。