第28章 少女のいる世界
私と別れてから私の核の記録を取り続けていたらしい喜助さんは、E組からの依頼を受けて、私が長く滞在し、誰かと親交のあった世界を訪れていったそうだ。
そしてその先々で私の現状を伝えれば、皆して私の幸せを喜んで、涙した人までいたんだとか。
「流石に人数が多すぎて連れてこれなかったんで…手紙やお写真、たっぷりと預かってきましたよ。また今度、うちに置いてあるから取りにおいで」
すごい量だから、なんて苦笑する喜助さんだけれど、どれだけ回ったのか…
聞かなくてもわかる、全てだ。
この人ならやりかねない…というか、やってしまうからこそのこの人なのだ。
『…よ、く…生きてた、わね』
「殺されかけてましたけどね?けっこう」
『……、…あり、がとぅ…ッ』
「喜助が俺の澪のこと泣かせた。うわ、最低やな」
「澪ちゃん泣かせちゃいけないでしょ〜、散々泣かせてるんだからさぁ?」
「待て平子、手前のじゃねえよ」
最後の最後の中也からの正論に、泣いてるのを乱暴に拭ってから、喜助さんに問う。
『…手紙…私が返事書いても、いいと思う…?』
「貴女の好きにすればいいんですよ、難しいことなんてもう考えなくていいんだから。出来なかったわけじゃないのを、無理矢理押し込めて我慢して生きてきたんだ…やっと残りが見えた人生くらい、好きに生きなさい」
『…ちゃんと、結婚したって伝えて回ってくれた?無駄なラブレター、多くないでしょうね』
「それを伝えて余計に恨みを買いましたけどね」
どうやら多いようだ、相当に。
『なるほど…、それでテーブル毎にデザートがてんこ盛りなのね。変な置き方だと思ったら』
「四十六室から許可取るのに、僕の首使って脅しかけたからねぇ…頑張った総隊長褒めてよ、蝶ちゃん」
『澪で大丈夫なのになぁ…、なに無茶なことしてるんですか、本当』
頭のおかしな人がいっぱいいる。
なんで私は幸せなんだろう。
今まで諦めてきていた全てのものが、報われたような…救われたような。
「お前の日頃の行いの良さだよ、これくらいしてもらって当然さ……にしても美味いなこのオムレツ」
『!!そ、それ蝶の!!!!』
「あ?俺が食ってんだからあっちから取ってきやがれ」
『それはダメなの!!!全部蝶が食べる!!!!!』
「「「その皿ごといくのかよ!!!?」」」