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第28章 少女のいる世界


立食パーティー式の会場にしようと提案したのは、カエデちゃんとカルマだったそうだ。
卒業式というより、お疲れ様会のような。

「蝶、記憶戻らない間に中也さんに手ぇ出されなかった?この人ずっと俺らに向けて手ぇ出しそうって言ってきてて、正直見ててそっちの方が心配だったくらいなんだけど…」

『え、それ本当なのカルマ?…中也?』

「なわけねぇだろ、俺を誰だと思ってやがんだよ」

「私に向けて“これで手ぇ出したら確実にあいつの中で人として終わるよな俺…?”なんてすごい形相で相談しに来たチビが何言ってるのさ」

『太宰さんに相談…?中也が?』

顔を覗き込もうとすれば逸らされる。
そんなに恥ずかしいのか…そんなに屈辱なのか。

可愛いなぁもう。

「いいからお前は!!!…っ、お前はだな…こ、これでも食わされてりゃいいんだよ…!」

『んむ…ッ、…!!!?』

いきなり食べさせてなにするんだ、なんて反論しようとしていたのに。
するはずだったのに、私のそんなちっぽけな意思はどこかへと消え、村松君考案だと思っていたメニューを口にして、言葉を失った。

それから、何かに取り憑かれたように全てのテーブルを巡って、用意されている料理の見た目や食材…それから味を、確かめていく。

今この場に並んでいるはずのない料理ばかりが、存在してしまっているということに気が付いたからだ。

中也の料理じゃないけれど、それでも私がこれらの味を忘れるわけがない。
忘れられるはずがない。

するとそこに穿界門が現れて、中から喜助さんを筆頭に、真子や京楽さんが現れる。

「やっほー姫ちゃん、卒業おめで『喜助!!!!っ、これ…、どういうこと!!?』近い近い近い!!?何が!!?」

「えっ、浦原さん、あんたマジでやりきったのか!?」

なんていうE組生徒達の反応からして、皆グルだったらしい。

『い、や…だってこれ…、この料理、テーブル毎にあれでしょう…?……作った人、違う人…よね?』

「さすが姫ちゃん、そこまで分かっちゃった?」

『…分かるも何も…!だってこれ、全部“他の世界”の料理でしょう!!?それにこの味、全部私の知ってる人の!!!』

まだ事態を把握しきれていない私に、喜助さんは言い放った。

「ご名答…貴女が出逢ってきた方々は、それぞれの世界でまだ生きていますよ。それと、君が幸せになれて良かったって」
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