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第28章 少女のいる世界


『え、…と……これは…、?』

「卒業証書授与式を挙行いたします。国歌斉唱」

『!!?ま、待って、私日本の国歌なんて突然言われても思い出せな…っ』

一人であたふたする私に、アナウンスの声がぷっ、と笑いを漏らす。
すると、皆して私に対して笑い始めるのだ。
中也でさえも。

「そ、っか、お前っ…、国歌なんかんなもん覚えていってりゃキリねぇわな!」

『え、中也…?な、何笑って…』

「それでは、堅苦しいのは抜きにして、とっとと卒業証書を授与することにしようと思います!…って、俺ら全員中学生のコスプレしてんだから、ありがたく壇上に上がれよ?白石!」

アナウンスの声…三村君だ、間違いない。
体育館内の装飾も、こったデザインからして菅谷君の指揮…何故か大量に用意されている料理やデザートは、恐らく寺坂組考案のもの。

アナウンスの声に導かれてステージを見ると、そこには、見ているだけでも気の抜けてしまうような、間抜けな見た目の…私の担任の先生がいた。

「蝶さん!?卒業しないつもりなんですかもしかして!!?それなら先生、また一年…こんどはマンツーマンで貴女と授業になっちゃいますよ!!」

『えっ、マンツーマンなら中也の方がい「「「いいから登れや!!!」」」は、はい…!?』

E組からの総ツッコミに気圧されて、中也に背中を押されて登壇する。
すると、本来浅野さんのいるべきそこにいる殺せんせーに、卒業証書を手渡された。

「この一年…色々と予測不可能な事態やとんだ出来事に巻き込まれてきましたけど、よく頑張りましたね。貴女は、先生の誇りですよ」

『…私、中学生活してたの一年未満なんですけど』

「学生の本分である、多岐にわたった勉強や経験なら、とっくに満たしているでしょう?何より本学の理事長が認めているんですから」

『…、あ、の……私のために、わざわざ…?こんな…聞いてない、ですって…っ』

思わず嬉しさや切なさがこみ上げて、視界がぼやける。
聞いてないよ、皆とまた…こうやって会えるなんて。

ちゃんとE組として集まれるなんて。
ちゃんと、この学校を卒業させてもらえるだなんて。

まさか私一人のために、卒業式まで開いてもらえてしまえるだなんて。

卒業証書を受け取って、ステージの上から皆へ向けて…そして何より、私をここに迎え入れてくれた浅野さん、烏間先生にむけて、頭を下げた。
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