第28章 少女のいる世界
「まあ冗談はおいておくとして…」
『ほう?冗談で姫に口付けをしようと…偉くなったものじゃな小僧』
「ごめんなさい姫ちゃん、そこまで言うならやっぱりキスしていい?」
『そこのアホ面が納得しないからダメじゃ』
「…なんや、えらいわがままんなって可愛いやんけ、紅姫さん」
『!!!?っ、は…え、…な、何言ってんのかわかんな…ッ』
「えらい素直やなぁ!!?どういうことやねん喜助!!!」
「どうもこうも、本性出しちゃったらこうもなるでしょ…、あーもう可愛いうちの姫ちゃん世界一!!!」
喜助からのそれはノリが軽いので無視。
おかげさまで冷静になれたけれども。
『で?本題は?』
「そ、そういうのがまた…ええと、姫ちゃんの身体の寿命…推定ですけど、報告しておこうかと」
『!!それを早く言わぬか変態科学者』
「ああもう好き、もう至福…ッ」
変態を目の前に少し引いたような真子の目。
やはり変態で間違いないらしい。
「ええっとですね。結論から言うと、貴女の身体…器の方の寿命は、中也さんの器の寿命に合わせられちゃいました。なので、恐らくあの世界の人体の平均的な寿命に近いものになるかと思われます」
『ふぅん、ほんとに中也と同じ寿命になっちゃったのね?褒めてあげる』
「ありがたき幸せ…!!!…ってそれもだけど、大事なのはここから」
喜助さんによれば、私の体も中也の体も、肉体が破壊された際の再生機能はやはり切っても切れないようになっているらしく…寿命が人並みになったのと引き換えに、逆にそれまでの間にどんな怪我を負ったとしても、核が破壊されない限りは二人共、肉体がこれまでのように再構築されるようになっているとのことだ。
『…十分よ、一緒に最期まで過ごせるなんて夢みたいじゃない』
「うん、そこに関しては本当に…二人が一番望んだ形になって良かったと思ってる」
私と中也の寿命を調べたのは、以前私の寿命を測ってくれた異能力者。
一度完全に死んで、魂と肉体の質が別のものへとなった私は、あの世界において新しく誕生したものだと換算されたらしい。
つまりは、あの時私の寿命を指していたあの数値は、確かに私の死を宣告していたのだ。
しっかりと。
「で、姫ちゃん。そこでなんだけど…何か忘れてなぁい?」
『?何…勿体ぶらないで言ってよ』
「ふふ、じゃあ教えてあげる____」