第28章 少女のいる世界
扉を作ってそれを開けて、見えた黒帽子と黒の外套目掛けて、一直線に飛びついた。
「ッグっっ、!!!、!?」
「「「中也さんんん!!!?」」」
「ああっ!!?お前俺との手合わせ中に何ふざけた転け方してくれ、……あ?」
道場の中。
彼を押し倒す形で抱きついて、そのままぎゅうううっ、と大事に大事に捕まえる。
「ッ、ち、よ…だよなっ…?…び、びっくりし…っ、あー……どうしたどうした、髪黒くして本性出してまで俺の胸の上でゴロゴロ引っ付いて甘え………ってほんとにどうした!!!?何っ、何があったのお前!!?」
「おいおい澪さん…、って、中也の反応からして合ってんだよな?髪黒いけど……澪さん、その人今俺と手合わせしてたんだけど?なぁ」
『あ、のね…っ、中也さん…!蝶、中也さんと結婚できるって!!』
「え、…?お前、俺ともう結婚してるよな確か?」
『そ、それはそうなんだけどあの…ッ、えっと…!!あ、あれ!!あのね、!?…ッ、籍、つくれる…!!籍つくって、中也さんとこに入籍できる、っ!!!』
って、喜助が…
そう漏らせば、目を丸くした中也が上体を起こし、自身の頬をつねってみせる。
「セキって、なんの話してんだよ澪の奴?」
「知らないの一角?現世だとそれぞれが籍っていう、存在している証明を持っていて、それが無いと誰かと正式に結婚したり…まあ公的な行動に制限がかかるものなんだよ」
「でも澪って、中也の嫁じゃなかったのか?」
「…そういう形だってことにしてたんだろうね。このロマンが分からないならそれ以上澪ちゃんの前で口開かないでよ一角?」
なんて中也と手合わせ中だったらしい一角と弓親がしている会話により、中也がまた自分の頬をつねりだす。
『あ、あの…っ…、だ、めだった…?……やっぱり、やめた方が…いい?』
「…い、や……俺からすれば今のままでも十分だったんだが、夢みたいだったからつい…」
『そ、うなの…夢みたいな話で、つい中也さんのところに来ちゃっ…、ッ…!!?』
引き締まらない私の顔。
その後頭部に手を添えて、唐突に唇にキスされた。
「…え、」
「ちょっ…!?」
人目、かなりあるんですけど…今、え…?
した、よね?
「…いや、ごめん…お前が夢みたいに幸せそうにしてくれてたから、したくなった」
何この人、こんな人が私の旦那様でいいんですか、ねえ