第28章 少女のいる世界
昼食を食べ終えてから、中也に引っ付いて再び尸魂界を訪れる。
「にしても、久々に食べるとやっぱり絶品だよなぁお前の愛妻弁当」
『…美味しかった?』
「世界一だわ、間違いねぇ」
相変わらずの褒め殺しについ彼の背中に顔を隠すも、それでも今はなんとなく嬉しさの方が勝っていた。
大丈夫、私はここに来ても大丈夫。
ここにいても大丈夫、誰かと話しても大丈夫…誰かに会っても、存在を認識されても、大丈夫で____
「あっ、澪さん!!戻ってこられたんですか!?いけない、隊長が会う前に私が…」
『…気にしなくていいよ、私が来る度こっちに来るようなら隊長業務に集中させなきゃだし』
急に、冷めていく。
何かを諦めるように…手放すように。
この子は悪くない、悪くない…私がいけないだけ。
私が、欲張りで融通の利かないわがままなだけで。
再会した雛森ちゃんに、“当然の返答”をしながら、現世への門まで移動しようとする。
「いえ、その…平子隊長、澪さんのことあの後追いかけて行ったんですけど、追いつく前に帰っちゃってたから…」
『仕事させとけばいいよ、私のこと気にさせなくていいから』
「そう言われても…って、お連れさん……?ですか?尸魂界に現世の人間を連れてくるのは…」
「あー、まあ…訳ありで。京楽さんに話通してからの方がいいならそっちに行かせてもらうけど」
雛森ちゃんが話題に困ったのか、目に付いた中也のことに話が変わる。
それにピクリと、私の中の何かが反応する。
「あ、いえいえ!私の判断で決めていいことでも…面識があるということでしたら、ね?」
「悪いな。んで、蝶?どこ行けばいいの?」
『…現世』
「現世…って、もしかして浦原さんに会いに?」
『一応は。顔見せに行くくらいだけど』
「!あ、もしかしてそれで尸魂界を経由して…そういうことでしたらすみません、うちの隊長、澪さんが来たってきかなくて。邪魔しちゃったなら私が代わりに謝『勘違いしないで、雛森ちゃん』え…、?」
『確かにあいつは邪魔しに来るし鬱陶しいし、馬鹿だし阿呆だしどうしようもないけど』
そ、そこまでは…と雛森ちゃんが狼狽えるが、少しキツくなりつつも、さすがにちゃんと言いきった。
『あいつが私の元に来ちゃいけない理由は、いついかなる時も存在しないの。謝ることだって認識は、改めてちょうだい』