第28章 少女のいる世界
『……』
「…その反応からしてみて、平子ってところか?あいつもやばいほど取り乱してたからなぁ、お前のこと思い出した時」
『…忘れられてた方が、良かった』
「おいおい、またなんてこと言ってんだよ?流石の平子でも泣くぞ?お前にんなこと言われちゃ」
『だ、って…私の場所、もうないんだもの…っ』
ピク、と指が反応する中也に、なんで?と問われる。
『戻っちゃダメなんて分かってる、けど…わ、たしがいていいのは…ここだけ、なの…ッ、ここだけだって、感じちゃったの…!!…、どうしろってのよ、こんな…』
思い出さない方が、よっぽど幸せだったんじゃないだろうか。
誰かのためにと頑張って…ここまで私が苦しくなる必要が、どうしてあるのだろうか。
『わた、し…わがまま、かなぁ…ッ、?…ねぇ、どうしたらいい、?ど、したら…わたし、これ以上ほしがらないようになれる…?』
「……欲しがらないようにならなくていいんだぞって、言ったら?」
『…そんなの、誰が私なんかに言「他の誰でもない、俺がそう言ったら?」…どうして、?』
椅子からおりて床にしゃがみ、私の顔を下から覗き込んで涙を指で拭う。
指に伝わせて優しく目尻を撫でる彼の指に酷く安心させられて、私の世界の全てがここにあるような気さえした。
「俺以外の…浦原さんや、平子に対して。昔はどうだったか分からないが、再会した今、俺にするみたいにそうやって、素直にわがまま言えてる?」
『…言っちゃいけな「言っちゃいけないって、あいつらが言ったのか?」……私、は…迷惑かけていい、の…中也さんだけで…ッ』
「そんなことねぇよ、確かに俺はお前にわがまま言われんの大好きだし、絶対に受け止めてやるってここまで言い聞かせ続けてる奴だけど……甘えて、いいんだぞ?ちゃんと、俺以外の誰にでも」
『!!!…、そ、れで…もし、ダメだったら…?私、ほんとに居場所、なくなっちゃったら…、?』
「なんのためのここなんだよ…そのための俺ですよ?」
俺の言い聞かせ方が思わぬ方面で苦しませちまってたみたいだな、なんて言いながら私を強めに抱きしめる彼に、力いっぱい抱きついた。
「辛い時に真っ先に飛びついて来てくれたの、すげぇ嬉しいんだよ今…な?頼ったり甘えたりすんのも、悪いもんじゃねえだろ?」
『…、浮気って、言わない…?』
「言わない。安心しろ」