第28章 少女のいる世界
「真子と会ってきた後なんやろ?あいつ澪の霊圧だけは変態並みの速度で感知して駆け付けるからな」
『…他の人にもそうだって。あの馬鹿は誰かにだけ贔屓するとかそういう采配できるほど器用じゃないもの』
「せやな。やから、澪のもんになると無意識にすぐそっちに駆けつけてまうんやもん、どないしようもないわ」
『私じゃなくてもそうでしょう?私は今となっちゃもう珍しいってだけで…』
少し考えるような素振りを見せて、リサは私に断言する。
「いや、あんたに対しては……ほら、うちら全員、何日か前にあんたの記憶が頭からすっぽり抜けて…それどころか存在さえなくなってたような感覚になってたもんやから」
あんたの旦那がこっちに乗り込んできて探し始めて、ようやく思い出せたんやで?
なんて言うリサに、どういうことなのかを少し時間をかけてから理解した。
『ああ…うん、ごめん迷惑かけて。…あれも、私が悪かっただけだから』
「あんたは自分が悪くないことでも自分のせいやって思ってまうからなぁ?」
『そんなことないよ。今尸魂界にいられることだって奇跡みたいなものだし……ごめん、ちょっと今余裕ないかも』
ポン、と頭を撫でてからまたいつでも来ぃや、と告げて、リサは自身の隊舎へと戻っていく。
流石だ、よくお世話になっていただけある。
考え出したらキリがない。
だって私、普通の子じゃないもの。
尸魂界に来たら、ますます…皆と、違う。
違う…違うんだ、全然。
誰もが知ってる、私が何をしかけたのか。
私のせいだったって…真子だって知って____
考えるだけ考えたら、やっぱりもう自分じゃ尸魂界に馴染めなくって、どこにも何も吐き出せなくなって、扉を作って逃げていった。
初めて、世界から逃げた。
初めて、逃げて…情けない理由で、迷惑をかけにいった。
『…ッ、中也、さ…っ!』
「!!蝶、もう戻ってき___!!!?」
『ッ、きな、かっ…わ、たし…行けなかっ…!』
一心不乱に、彼の胸元に飛び込んだ。
言葉にできない感情を全部涙に変えて、縋るように泣きついた。
「…俺に、会いたくなっちまったのか?…誰でもそんな時くらいあるさ、気にやまなくていい…昼にでも、ついて行ってやろうか?」
『め、んなさ…っ、ぃ…ッ』
「いいよ、多分お前が悪いことじゃあないだろうから。…誰かに会ってきた?」