第28章 少女のいる世界
やっぱり私はわがままで、どうしようもないほどに飢えているらしい。
独占欲が強いだけじゃない、そんな言葉ではおさまらない。
雛森ちゃん…雛森桃。
恐らく私は、純粋に彼女とはあまり関わるべきではない。
環境や状況が悪かっただけで、彼女を恨むのも妬むのも、筋違いであるはずだから。
まあ、彼女の起こした事が、全て彼女のせいではないかと問われれば…私はそうとは言えないけれど。
あの子も被害者であるのだということを考えれば、私はできる限り、あの子のことを考えないようにするべきだ。
私の黒い感情の矛先にしようものならば、あの子ならすぐに壊れてしまうだろうから。
『……どうしよ』
思わず遠くまで逃げてきたはいいものの、現世に行く勇気や余裕が今はもう完全になくなっている。
こんな心境で喜助さんになんて会えるわけがない…会っちゃいけない。
捩摺を呼ぶのも、何か違う。
自分で自分が整理できない。
できるだけ誰にも迷惑かけないようにしなきゃいけないのに。
これ以上、こっちの皆に影響させるような行動は慎まなくちゃいけないのに。
仕方がないじゃない、どうしろってのよ。
好きになってたのに気がつくことも出来ず、自覚を持った頃には引き裂かれた何百年も後で…そんな奴と今更になって再会して?
憎まれ口叩き合うのも煽り合うのもいつもの事。
だけど、私はどうしようもなく嫌なんだもの…他の子と比べるような物言いに、どうしても弱いんだもの。
それも、相手はあの雛森ちゃんなんだから。
私は…
「かわい子ちゃんが落ち込んどんなぁ…どないした?真子の奴にまた何か言われたんか?」
『…、落ち込んでないよ、大丈夫』
「リサお姉様の目を侮ったらあかんで?澪が大丈夫や言う時は信用すんなって真子から言い聞かせられとるんやから」
また、真子。
存在と変顔だけじゃなく名前までうるさい奴だ。
完全に八つ当たりだけれど。
八番隊の現隊長の、矢胴丸リサ…彼女は真子とも親交が深く、その関係で私にもよくしてくれるようになった人物。
少々NGワードとやらが多めだそうだが、いい人だと私は思う。
『今あの阿呆面のこと思い出したくないかも』
「…失恋した乙女みたいな顔してんで?旦那と上手くいってないん?」
『ううん、そこは全然…私がなよなよしてるだけだから、気にしないで。ありがとう』
そう、私の問題だから。