第28章 少女のいる世界
中也は私を一人で浦原さんの元へと行かせると言い、とっとと執務室へと行ってしまった。
私は、喜助さん…もとい我が主に対して、とんでもない禁忌を犯してしまっていたというのに。
尸魂界へと移動し、現世に向かう手前で今一歩踏み切れずにいれば、誰かが私に話しかけてくる。
「澪…!」
『!!…、し…んじ』
「びっくりした、いきなりお前の霊圧感じたさかい飛んできたわ…、って、記憶戻ったんか…?」
『え、…あ、うん。戻った』
「よう目覚めて数日で思い出したもんやで…」
なんて驚く彼を追うようにして、こちらに近づく霊圧がもう一つ。
「平子隊長!!いきなりいなくなるなんて、どうし…!」
「おお桃、ごめんごめん。俺もびっくりしてしもうて」
『雛森ちゃん!久しぶり』
「お、お久しぶりです澪さん!…、そういうことなら先に言っててくださいよ?それなら私ももう少し気を利かせられるのに」
『いいのよ雛森ちゃん、こんな馬鹿に気なんか遣うだけ無駄に時間取って疲労を伴うだけだから気にしないで』
「ええ笑顔で言いよるなぁおい…?」
ピクピクと口角を引き攣らせる真子に雛森ちゃんも苦笑いなのだが、まあ通常運転なので何の違和感も感じられはしないだろう。
…いや、この子の目の前でこんなやり取りをしたことがあったっけ。
「ひ、平子隊長落ち着いて…、澪さんも、そこまで言わなくても…ね?」
「せやせや、桃はええ子やなぁほんま。この優等生を少しは見習えお前も」
『あんたにいい子なんて思われなくたって結構よ、オサレヘアー隊長。それに私天才だから、あんたごときには理解できない優秀な存在なんで』
「本物の優等生はその馬鹿とやらにも分かってしまうほどに優秀なんですぅ~!」
出た、変顔。
憎たらしいほどの変顔を披露して煽ってくる馬鹿に…少し、心を痛める私も私。
やっぱり、こいつと話すのにはつい意地を張ってしまう。
…私は優等生でも天才でもなんでもなくって、ただの爆弾持ちの異端な存在だって、ちゃんと分かってるのに。
『馬鹿には理解できなくていいことをわざわざ教えるのが無駄なのよ…じゃ、ちゃんと仕事しなさいよ?あんたの自慢の優等生でいい子な雛森ちゃんに、くれぐれも!迷惑かけないように!』
「い、言いおる…ッ!!…って待て、お前どこ行くねん!!?」
瞬歩で、とっととその場から逃げた。