第28章 少女のいる世界
「はい、ちゃんと平熱に戻ったね。蝶ちゃんが熱出て一日で治しきるなんて珍しいじゃない…中也君、何か嬉しいことでもしてあげたの?」
「いつも通りですよ」
『いつもはあんなにキスしてくれないくせに』
「へえ、いつもはそんなにしてくれないんだ?蝶ちゃん相手になると照れ屋だもんねぇ、中也君も」
元々免疫が弱まってかかった類の熱ではなかったというのもあるだろうが、私の体のコンディションがこの人から注がれる愛情によって左右されるというのは、これまでの経験上よく分かっていることである。
…昨日はいっぱいいっぱい、一緒にいてもらえたから。
「いやいやいや、普段も散々して…ッ」
『蝶が寝てる間の方がしてるって自己申告してきたくせに』
「え、その話本当?中也君」
頭を抱える中也に追い打ちをかける。
ああ楽しい、可愛いんだから、本当。
「就寝時の方が日中より蝶といれる時間も長いんですから、必然的にそうなるだけでですね!?…で、首領、今日の呼び出しはいったい?」
「ああそうだそうだ、蝶ちゃん!君、記憶は今どの程度戻ってる?」
『!…一、応……多分、全部戻ってる……はず、です』
「おや、そこまで早いペースで思い出したんだ?頑張ったねぇ…そう、そこでなんだけど、浦原さんがまた様子を見たいそうだよ。今度は“ちゃんと”」
『……ええ、あの浮気性の変態が?』
「お前の浦原さんへの扱いどうなってんだよ相変わらず」
嫌いなわけじゃないし、むしろ好き。
だけど、こういう割り切り方をして生活してきたのだから…まあ、仕方がない。
真子と似たような扱いになってきている気もするが、まああの浮気性はどうせ夜一さんや雨ちゃんや、ネリエルさんあたりにでもまた好きなだけうつつを抜かしているのだろうし。
『私に好きだとかほざきながらすぐ別の女の人に気移りする人ってどうかと思うのよね?喜助さん然り、真子然り…』
「浦原さん…はまあフォローできないからともかくとして、平子はそこまで酷くないんじゃ…?」
『蝶は世界で一番頭がおかしいくらいに変態的に蝶だけに一途な中也さんが大好きなだけですが、何か?』
「式はいつ開こうか?そろそろドレスと式場も選びてぇしな」
「中也君も分かりやすいよね…?」
会うのが嫌なわけじゃないし、勿論私だって会いたい。
…でも、罪悪感だらけなんだもの。