第28章 少女のいる世界
『お…、わり…?』
「おう、すげぇ気持ちよかった。ありがとう…」
撫でられるのにまた満たされて、ぼうっとした頭でも言葉にする。
『…いつもなら、もっとするのに…?』
「……今日はお前の方がすごい頑張ってくれたから。…ほら、水でも飲もう、風呂上がりだし、ちゃんと水分とらねぇと」
『……、立て、なぃ』
「いいよ、俺が運ぶから」
愛おしそうに見つめられ、それからふ、と微笑まれて、新しいバスタオルに包まれてソファまで運ばれる。
それから少しするとグラスを持ってきて水を飲まされ、そのまま彼のシャツを着せられた。
『…中也さん、優し…から、飼われるの好き』
「阿呆、これは飼ってねぇの。俺が着せてやりたくて着せただけ」
下着は自分で履いてくれと耳を紅くして言われたのだけれど、相も変わらないその反応ぶりに、素直に心の底から彼に強請る。
『履けない』
「…服だけでも絵面がやべぇってのに、また俺に罪を重ねろと?背徳感半端ねぇんすけど」
言いながらもそうしてくれるあたり、やはり言葉遣いの割に本当に丁寧な人である。
そして私に履かせるタイミングで目を瞑るのも相変わらず。
しっかりしすぎなんだから。
『……キスは?』
「…もうちょい理性戻ってくんの待ってやってくれ。先にその髪乾かさせて」
本気で照れる彼に加虐心を揺さぶられながらも、しかし自分の身体が本当に少し疲れすぎたのが感じ取れて、それ以上煽るような真似はやめておいた。
…結構しんどいんだ、この行為って。
それも見越して、彼は一度自身が達するタイミングで堪えることも延長させることもなく、今日は止めてしまったのだろうか。
髪を乾かしてもらい、その後私の体温を測る彼は、苦笑いで頭を抱えていた。
「…四分上がってる。風呂上がって、髪乾かして少し時間置いてこれだ……ちゃんと寝るからな?この後は」
『中也さんと一緒に寝れる…?』
「誰かさんのこと襲っちまわないように頑張って今日は俺も早めに寝るわ」
『じゃあ寝る前にいっぱいキスしとかなくちゃね?』
「お前分かってて言ってるだろそれ…鬼かよ」
『鬼嫁が嫌なら離婚する?』
「待ってくれお前鬼嫁の意味わかってねぇだろ!?…、んなことされっと俺生きていけなくなる。やめて」
『大丈夫、私も生きていけなくなるから』
「冗談がブラックなんだよ…」