第28章 少女のいる世界
「震えてる。…可愛いなぁもう、ほんと」
くしゃ、とはにかむ彼に胸が更にうるさくなる。
彼の方を向かされるも身体が直視できなくて、視線を逸らしていると腕を引いて彼の胸元にいつものように抱きとめられる。
『ッ!!?な、な…っ』
「いつまで経っても来れなさそうだったからつい。口にさせてくれるんだろ?」
真っ直ぐ向いてくれなきゃしてやれない、なんて口にしながら両手を頬に添えられる。
逃げられない…逃げたくない。
「いい子…」
『…っ…、ン…ゥ、!』
触れるだけ…それも、長くゆったりとした、心地の良い優しいもの。
本当に、そういう触れ方はしないらしい。
そういうところ、律儀なんだよなこの人。
「…、…顔、真っ赤んなってる。紅姫っつうだけあるな」
『ち、が…ッ!?そういうのじゃ…ない、もん』
「ははっ、照れてる照れてる」
『…好、きな人に…こんな、見られてキスなんかされて……、普通でいられる女の子、とか…いるん、ですか…っ』
「……好きの具合や経験にも寄るだろうが………お前そんなに俺の事が好きか。そうかそうか」
嬉しそうに数回軽く口付けられて、目を合わせられる。
ダメだ、持っていかれる…理性飛ばされそう。
『恥ずかしい、のに…どんな格好させられても、屈辱的だとか、死にたいとか、思わないの。変なの』
「…じゃあ今ここでそのタオル、外せる?」
ピク、と手に力が入る。
それから、少し覚悟を持ってタオルを外そうとするのだが。
その手に彼の手が重ねられて、タオルを直される。
「冗談だ。約束したから、俺でも自制くらいする」
怒ってくれて良かったところなんだぞ?なんてまた嬉しそうに困った顔で笑いながら、彼は言った。
『…でき、ます』
「今のは本気で言ったわけじゃないから真に受けなくていいんだよ、今日のところはその気持ちだけありがたく噛み締めておくから」
本当、どうしてこんな風に私のことを気遣ってくれてしまうのだろう。
だから、余計に好きになる。
だから、なんだってしたくなってしまう。
貴方に従わされるのは、嫌いじゃない。
だって、どんな私でも、何をしていても貴方はきっと私を肯定し、大切にしてくれてしまうから。
『できる、のに…』
「…今ここでされちまったら、本当に抱いちまいそうだからダメ。元気になったらまた嫌でも可愛がってやるからよ」