第28章 少女のいる世界
なんだかんだ言っても、そういう目的でない時は一応紳士的な中也は、私に先に入らせた後に浴室へと入ってくる。
浴槽に浸かっていると彼の鍛えられたその肉体が目に入り、気づかれないうちにすぐさま視線を壁に移した。
…顔熱。
「もう洗った?」
『一応は』
「じゃあ俺もとっととそっち入らねえとな」
髪を洗う音にさえドキドキする。
良かった、シャワーの音でむこうに気づかれなくて。
料理を手伝いたいがために申し出はしたものの、こんなの恥ずかしいに決まってるじゃないか。
体に巻いたタオルを、胸の前でキュ、と握りしめる。
あれ、私今までどうやって一緒にお風呂なんて入ってたっけ。
ああ、小さい頃の体なら全然抵抗なんてなかったのに。
自分のことを女性として扱われると、どうにもそれを意識してしまって……ずっと、自分の体なんてそこにある価値もない、空気のようなものだと思っていたのに。
「…蝶、入っていいか?」
『ひゃいッ!!!?』
「おおお!!?は、入るぞ!?」
頭の中が中也でいっぱいいっぱいでパンクしそうな時に本人から突然話しかけられ、盛大に叫んだ。
恥ずかしい…
頑張って少し後ろに詰めると、中也がきょとんとした声で聞いてくる。
「え、お前そう行くの?向かい合わせで座っても大丈夫なのかよ?」
『へ…、え、む、向こう向いて座るんじゃ…』
「お前と入ってんのにそんな虚しいことするか?」
『虚し…、ぁぅ…っ』
思わず泣きそうになるも、向かい合わせで顔を見られるよりはと今度は前に詰める。
すると了承したと言うように後ろに中也が浸かってきて、お湯の傘が増す。
それから、抱き寄せるように肩を引かれて、彼の体に触れられる。
「緊張しすぎ。大丈夫だって、襲ったりしねぇし」
『!!っ…中也さん、に見られて…、恥ずかしくない、わけ…』
「綺麗な体してるよ?お前は」
それにこんなに可愛らしいし、なんて言いつつ、後ろ側から私の頬に口付ける。
目をギュッと瞑って羞恥に耐えるも、そのキスが今度は肩におりるようになってきた。
『き、す…しすぎ…!』
「全然足りねぇよ、手加減してんの分かるだろ」
『ぁ…っ、…そっちばっかぁ…』
「じゃあどこにして欲しいんだよ」
首を避けられて比較的感度の低めの所にばかり口付けられ、彼にそう問われてたまらなくなった。
『…口』