第28章 少女のいる世界
『治った、治りました』
「微熱以上なので治ってません、大人しく休んでろください」
『料理!中也がしてばっかり!!』
あれから熱もだいぶ引き、夜に帰宅してからというもの、キッチンに立たせてくれない我が旦那様。
イケメンだ、主夫にでもなれるよもう。
私の立場って一体…。
「そりゃ俺がするだろ、お前がしんどい時なんだから」
『しんどくない』
「それでもし手でも切ってみろ?火傷でもしてみろ…打ち身でもしてみろ…、俺死ぬぞマジで」
あ、主夫じゃないわ、パパだったわ今。
『そんなことしません』
「フラグ立てたのでやらせません」
『フラグって……ねえ、私の出番無いんですけど。久しぶりなのに、ずっともう中也になんでもされてばっかりなんですけど』
「いっその事一生こうやって育てて面倒見てやりてぇんだけど?飼いてぇ」
『私に人間としての尊厳ってあるのか教えてもらっていいですか?』
「俺の部屋に一生閉じ込めて、三食デザートつきで全て俺の手作りを提供…更に風呂には俺が入れ、寝る時は同じベッ『わかった、もういい変態。それするとほんとに私が何もしない生活になっちゃうからダメ、別意味で耐えられません』お前も大概変態だよな…?」
相手が貴方じゃなければ受け入れてませんよ、と返せば、きょとんとこちらに視線を向けられる。
それにふい、と横を向くのだけれど、何故かこちらに近付いてくる中也。
『顔近いです』
「キスしたくなって」
『ご飯作るんじゃないんですか。私が作ってもいいならキスしてもいいですよ』
「分かった。じゃあ先に風呂行ってこい」
『…今の流れで一緒に入らないの?』
「入って欲しくなっちゃったの?」
『動けぬよう一時的に改造するぞ?小僧』
「すんませんっした紅姫様」
最終手段はやはり有効らしい。
まあ本気でやることなんか普通はないだろうけれど、それでも使えることは使えるようだ。
『じゃあ私も料理するからね』
「…後で一緒に風呂入ってくれるなら今回は許す」
『お触り禁止ね?』
「嫌に決まってんだろんなもん」
『ちゅーまでなら許してあげます』
「明るいとこだとほんと恥ずかしがり屋だよな…電気暗くしててもあれだが」
乙女の恥じらいにケチをつけるとは。
久しぶりだなぁ、一緒にお風呂だなんて。
今日で何回目になるだろう…熱もたまには悪くない。