第28章 少女のいる世界
『ンぁ…、…っ♡』
「…」
『ッは、…っあ…♡』
クチュ、と響く水音。
口の中をまさぐられるから、耳まで直接響いてくる。
いつの間にか二本の指に蹂躙され始める口内に、私のペースは壊されていた。
舌や上顎を撫でたり、指の腹で優しく掻いたり。
こちらを見もせずにそんなことをやってのける中也にまたゾクゾクして、されたい放題だ。
「……そんな声ばっか出されてると気になっちまうんだが?」
『ぁッ、ごめんなさ…ッ♡…っはぁ…♡』
「謝るとこまで落ち込まなくていいんだけどな…指舐めてるだけなのにそんな声出しちまうんだ?」
喉の奥の方にまで入れられた指に、弱い所を丁寧に撫でられる。
それに気が狂いそうなほど感じさせられる…喉なのに、感じる。
こんなの、中也にシてるみたいな…
『ンンン…っぁ、あぁ…ッッ!!♡♡』
「っ!?…、ち、よ…?……えっ、もしかしてやりすぎた?」
『ン、ぁ…、はぁ…ッ♡』
中也の指、恐るべし。
こっちの様子を伺っていたわけでもないのに、軽くこの様だ。
引き抜かれる指に切なくなるのだって、中也のせいだ。
「あーあー、トびかけてんな…悪い、体調崩してる時に」
『ぁ、ぅ…ッ?♡ちゅ、やさ…♡』
「撫でられてるだけなのにそんでまたそんなに甘えてくるだろ?お前…」
ぎゅうっとこちらを向いた中也に抱きしめられれば、それからベッドに仰向けに直され、布団をかけられる。
『…、やだぁ』
「強請ってもダメ」
『いや…っ、ちゅうやさんと離れるのいや!!』
「……えらい寂しがり用じゃねえの。…久しぶりな感覚でもしてるのか?記憶戻るまでの分があったし」
駄々をこねる私を見かねてか、背中をトントン、としながら、今の私の心境を当てられる。
『だ、だって私二千年分…っ』
「そうだな。お前は二千年以上生きてきてる分全部で、俺の事愛してくれてるんだもんな」
『!…ッ、す、う十年会ってなかったみたいな、感じなの今…』
「…そんなに?…それなら、そうって早く言え…気づけなかったのはごめん。でも、それなら今日じゃなくてもいい仕事してる場合じゃねえから」
布団の中にス、と入ってきて、いつものように腕枕をしてくれた。
そう、これ。
これが欲しかった…この距離が、この温もりが、私を安心させてくれる。
『ちゅうやさん…ただいま』
「ん、おかえり」