第28章 少女のいる世界
『…織田作だ、そう。織田作』
「何、お前やっと思い出したのか?」
『中也がその“青薔薇”、執務室に置いちゃってたからよ』
ベッドチェストの引き出しを開ければ、そこにはまだ青色のプリザーブドが、綺麗に保管されていた。
「そりゃ、どうすりゃいいもんか分からなかったし…絶対綺麗なまま置いておきたかったからな」
『中也って何気に織田作のこと大好きよね』
「お前のこと大事にしてるだけだ。それにあいつなら、太宰の糞野郎の方がよっぽど仲良かっただろ」
『…でも織田作、太宰さんは人として終わってるって言ってたよ?中也のことしっかりしてるって言ってた』
「よく分かってんじゃねえか」
まあ、誰がどう見てもそうだろう。
太宰さんは…人間としてどうしようもないし。
人間失格って異能力なだけあるなぁ。
『で…、中也はどうやって研究施設に乗り込んできたの?』
「ドアぶっ飛ばして正面突破」
『中也らしいわね』
そうだ、この人が出してくれた。
あの檻から解放してくれたんだ。
『……うん、そっか。ふふっ、力技で檻壊しちゃうなんてどうかしてる…ほんと、そんな人出逢ったこと…ないよ』
「…今、なんて呼んでほしい?」
『分かってて聞いてるなら拗ねるわよ』
「じゃあ蝶ちゃんだな」
『中也さんの蝶です、ただいま』
「猫みてぇにごろごろしてくんじゃん。甘えてぇの?」
グリグリと彼の胸に顔を埋めるも、相も変わらず喜ばれるだけ。
ちょっとは抵抗くらいもったらどうなの、この変態は。
グイ、と少し上に移動して、彼のクロスタイを外してはだけさせていく。
「…ッ、なぁにエロいこと考えてんの?」
『マーキング消えてる。次消したら怒る、自己申告しなさい』
「へぇ、つけて欲しいんだ?」
『…、…本当に、付けてなかったんだ』
私の記憶がない間、ずっと。
彼の首筋や胸元に紅く華を咲かせれば、彼が今度は私の衣服に触れ、緩めていく。
「そんな改まんなよ、俺まで緊張してくるだろ」
『…見、な…ッぁ…!』
両腕を痛くない程度の力でベッドに押さえつけて、彼は私のあらわにされた胸元を見つめて、続ける。
「何?見ないでほしいの?…んじゃ、印つけんのはお預けだな」
『あ、…そ、んな…いじわ、る…っ』
「して欲しいって素直に言わなきゃしてやんねー」
折れるしかない、こんなの。