第28章 少女のいる世界
『ゼリー…』
「そんな顔してもダメ。先にお粥」
『…中也のゼ「俺が作ったお粥だけど、食べてくれないのか今日は?」食べます』
レンゲに掬われたお粥を冷まして、中也がらこちらにそれを差し出す。
口を開けば中に上手く流し込まれる…のだが、ここでようやく違和感の正体に気がついた。
ごくん、と飲み込んで、それを中也に向けて指摘する。
『ねえ…なんで食べさせられてるの?』
「こうしたら食べてくれるかなと思って」
『わ、私ここまでしてもらわなくても食べられる…よ?』
「じゃあ俺がしたいから」
嫌なわけではないため、断る理由は特にない。
が、これは確かに嬉しいのだけれど…
『……恥ずかしい、です』
「知ってる。クソ可愛い」
『ッ!!!!』
ぶわわっ、と熱くなる顔に、熱が上がったような気がした。
それでも食べさせ続けられるために恥ずかしさから解放されないのだけれど、それと同時に、確かに彼の言ったように嬉しさだって感じていて。
『…おとうさんって、いたらこんな感じ?』
「さあ、知らね。…でもお前の保護者はこんな感じ」
『!そっ、か…』
口が緩む…鼻の下伸びそう。
嬉しいな、保護者って…それに、こんな素敵な人が私の保護者でもあるなんて。
「照れてる?すげぇ嬉しそう」
『ん…、……!ま、まさか他の人にも同じようなことしてたり…?』
「するか阿呆、誰にすんだよこんなこと。だいたい料理すんのだってお前のためくらいのもんなんだから」
『…してたら一日お仕事禁止ね?』
「どんとこい」
お仕事禁止令くらいでは、狼狽えもされなかった。
やばいなこの人、日に日にやばさの片鱗が増えていって頭の相当なおかしさを身にしみていっている。
…うん、やばいこの人。
『中也さんて、頭やばいって言われない?かなり頭おかしいよ』
「さん付けするなら教えてあげない」
『…中也って頭おかしいのね?』
「おう、おかしいな。わかったか?お前限定の世界一の変態だってこと」
開き直っているあたり、もう気にもしていないのだろう。
気にする必要も無いくらいにどうでもいいことなんだろう。
それが当然のことなのだろう。
『今日は書類整理だけ?姫、ここのベッド使ってていいの?』
「いいよ、一日そこにいて。書類…だな、意識なかった時の分が溜まってるし」