第28章 少女のいる世界
「……食え」
『…』
「………食わねえんなら無理矢理捩じ込むけど?その口ん中」
意識が戻った時から、こんな感じ。
太い首輪や手枷、足枷…鎖で見知ったベッドに繋がれた私の身体に、暖かそうな食事が運ばれてくる。
目が覚めて私が受けた衝撃は、恐怖なんかとは全く別のものだった。
『…見つかっちゃったんだ』
「…もう一度言う、食わねえなら手段は厭わない」
『へえ…どうするの?興味あるなぁ、唇溶かして食堂に直接捩じ込むとか?…ああ、管を通すのも有りよね…“慣れてる”し』
驚き。
ただ、それだけ。
私を見つけ出してしまったことへの…そして、本当に飼い慣らしてしまおうとするこの監禁行為に対しての。
「お前がされて嫌がることかもしれねえっつったら?」
『私がされて嫌がることなんて…いいよ、私は貴方にそれくらいの嫌がらせをしたんだか…ッ…、っン…ッ!!!…ッハ、…っンン゛…!!?』
生意気な減らず口を叩いていたのにも関わらず、いたぶるようなこともされず…有無を言わさぬよう、単純に唇を塞がれた。
彼のそれで塞がれて、彼の口の中で細かくされた食べ物が口内に入れられる。
そしてそれを苦しいくらいに詰め込ませてから、私がそれを飲み込むまで、息をさせないようにキスをする。
『…っ、…ハ…、はぁ…ッ』
「一口でそんなんじゃ先が思いやられるな…休憩ねえから頑張れよ」
『ぇ、…ッ…!!!!』
声だけで、分かる。
否、声でしか分からない。
私の視界は真っ暗だから。
何も見えない暗闇しか、そこには広がっていないから。
第二軍を全て飲み込んで、呼吸もままならないまま、無意識にそれを口にした。
『目、ッ…ぁ…、目、何も見えな…っ』
「見る必要あんのかよ」
『…ッ、…い、いです』
見ないでいい。
そういう言葉だ、今のは。
「……俺以外のもん、見ない?約束できる?」
『…、それが、貴方の望むことなら』
「…」
そっと外される目隠しに、久しくそこが外気に晒された。
目を開けると薄暗くて、しかし目の前に彼の服が見え、それからすぐに感じた上へ上げられた手の指先に伝う生暖かい感触に、思わず声が漏れる。
『ぁ…ッ、あ…!』
「…とりあえず二口食べれたから褒美。ほら、次いくぞ」
食べさせられて、愛撫されて。
気づいた頃には、彼の用意した食事を完食していたのだった。