第28章 少女のいる世界
「記憶の件はよかったよ、何はともあれ順調そうなら。…で、本当に任務行くの中也君?」
「勘を取り戻すためにも…!」
「あー…うん、いい目だ、キラキラしてるよ、あと生き生き。これは……好きなだけ暴れてきなさいもう」
保護者のような生暖かい目。
慣れっこなのだろう、こういう事は。
…おかしいな、こんな気持ちを私は持ちながら、一人で暴走もせずに生きてこられたのだろうか。
こんなにも、はち切れそうな程に胸が苦しいのに。
それでも、周りは気付けない…私が気付けないように振る舞えてしまう。
ああ、そっか、得意なんだ。
嫌な慣れ…。
「チヨ!!記憶戻ってきたって本当!!?チュウヤがおどおどしてばかりでずっと気持ち悪かったのよ?」
「ちょっ、エリス嬢!!?気持ち悪いってそれ酷くないですか!?」
「事実じゃない、親バカ。早めに卒業しなきゃいつか鬱陶しがられちゃうわよ!」
「んな゛、ッ…!!!」
本気でショックを受ける中也さん。
からかわれると、彼はこんなにも愛嬌のある反応を見せる。
太宰さんと未だに再会していないからか、生で見るのは初めてに等しい。
…まただ、また胸がチクチクする。
『中也さんが親バカなのはどうしようもないから諦めてるよ、エリスちゃん』
「チヨはほんとに優しいのね?…あ、そうだチュウヤ!言ってた新しい服屋さんは調べておいてくれた?」
「!!…っ、それがま「まだなんて言わないわよね?」……今からついでに連れて行けばいい、ですか…」
エリスちゃんは満面の笑みで、うん!と頷いてから、簡単に首領の元を離れてこちらに来る。
「えええっ、エリスちゃん行っちゃうのぉ!!?」
「久しぶりのチュウヤだもの、リンタロウと行く時みたいに気持ち悪くないから」
「!いや、けど蝶が確かエリ『行ってきなよ、エリスちゃんこんなに行きたがってるし』…い、い…のか?」
『うん。久しぶりなんでしょう?エリスちゃんと会うの』
この子も、なんやかんやでごく一部の人間のことを大切に思っているようではあるし。
「…依頼はとっとと片付けてくる…最速記録でも更新してやるぜ!!待ってろ蝶、秒で終わらせる!!」
『お買い物は?』
「最速でエリス嬢を満足させるさ、安心しろ!」
それじゃあ、行ってきます!!
元気な明るい声で、彼はエリスちゃんを肩に乗せて、任務に赴いた。