第28章 少女のいる世界
少しずつ、思い出してきた。
この世界にきて、中也さんと過ごしてきたこと。
亡くなった、大切な人のこと…私を愛してくれた人のこと。
それから、学校に通っていたことや、武装探偵社でお世話になっていたこと…そして、その学校で…
「おやおや、すっかり元気ですねえ蝶さん!お久しぶりです…先生、今ようやく動いてる貴女に出会えてホッとしてますよ」
『…先生、…うん、久しぶり、殺せんせー』
間抜けな見た目のこの担任の先生と、出会った。
元々使っていた校舎へ訪れると、殺せんせー…それから、記憶の中にいた烏間惟臣さんも、書類の整理や荷物の整理でそこに来ていた。
「蝶さん、その…身体、は…?」
『…少し、記憶が一部飛んでるくらいで……でも、大丈夫です。烏間さん』
「記憶って、一大事じゃないか!?…って、一度あんなことがあったんだしそれは仕方が「烏間さんも大概親バカみたいだよな?」中原さん、今そういう話は…」
「『中原さん??』」
私と中也さんが二人で声を揃えて聞き返せば、頭を抱えて中也さん、と言い直された。
やっぱりいい人だ、烏間さん。
『そういえば、あんなことって…そもそも私、なんで記憶が飛んでるんですっけ』
「聞いても俺のとこからいなくならないなら教えてやってもいいけど?」
『頑張って意地悪な風に言わなくていいですよ?教えてくださいな』
「けっ、可愛げしかねぇ奴」
結局褒めることしかしないんだもんなぁこの人…親バカはどっちなのやら。
が、そこで彼の口から語られたのは、意外な…しかし納得のいきすぎる事実だった。
「お前…死んだんだよ、二週間少し前に。殺された…核を奪われて、それを俺が壊したんだ」
本当に、死んだんだ私。
死ねたんだ、私。
…他の誰かじゃない中也さんが、終わらせてくれたんだ。
『よく、壊せましたね。…相当大変だったでしょ、あれ壊すのなんて』
「いや、想像つかないくらいにあっけなかった」
『!…じゃ、私が受け入れてたんだ。多分、相手が中也さんだったからですね』
それなら、納得がいく。
「…そっから、俺に分けてた分の半分の核を使って…勝手な話だが、蘇生させてもらった。今、俺とお前の体に、それぞれ四分の一ずつ入ってる」
『……ありがとう』
「!!!…ッ、いいってもんだよ」
『…うん』