第27章 飢えて枯れてなくなった
俺の体の中から出てきた核…それが二つに分かれてそれぞれの身体に入り込み、蝶の身体の傷が、乾いていたはずなのに少しずつ潤い始めていく。
「!始まった…っ、無菌空間を作っておきました!中原さん、貴方…少しだけでいい、血液を下さい!!あと、出来れば殺せんせー…隠している奥の手、貸してくれませんか」
「!おや、気づかれてましたか…喜んでお手伝いします」
「助かります」
担任は、蝶の身体を、血液から細胞まで、飛散した分を無菌状態で圧縮し、蘇生できるようにしておいてくれたそうだ。
浦原さんがまだ卍解を使って無菌空間を作り出せていることから、蝶の魂はやはりまだ壊れきってはいない。
そして、俺の中からなくなりきったわけでもない。
蝶のからだが傷一つつくことなく修復されていき、傷が全て塞がって、後は心臓に衝撃を与えるのみ。
「…電気じゃねぇとダメなのか?それは」
「……余程の力が必要です。貴方がやってしまっては、彼女の身体が物理的に怪我をしてしまいますよ」
「んじゃAEDもってこい、俺がやる」
「中也さん、貴方って人は…」
呆れられたって構うものか。
担任にマッハで持ってこさせたそれを使って、蝶の身体に電気ショックを与える。
それから、少しすると彼女の吐息が小さく吐き出された。
『…っ、……ハ、……』
「…!!!!」
それだけの事に目頭が熱くなるのだが、それから繰り返される静かな呼吸に、ただただ安堵し、涙した。
汚濁を使った後に輸血を終えて、自分の身体もあまり満足に動かせない状態だったが…しかしそれでも、彼女の身体を再び抱きしめた時に感じたそのあたたかさに、また涙が止まらなくなる。
俺を泣かせるような奴、お前ぐらいのものだよ、全く…
傍には捩摺がいつの間にか落ちていて、触れてみるとそこからも、あたたかなエネルギーを感じられた。
ああ、生きてる…二人とも。
それだけでも俺は、満足だ。
「蝶ちゃん!!!!生きて…っ!生きてる!!!!」
「うおおおお生き返ったああああ!!!!!」
「心配、させすぎなんだよほんと…!!」
ガキ共の声に一息ついて、しかしそこで遂に意識を保てなくなって、地面に…蝶の隣に、倒れ込んだ。
「中也…!?君やっぱり無茶ばっかりして!!!」
「!!中也さん!!!?」
お前の横だと、どんなところでもあったけぇや…