第27章 飢えて枯れてなくなった
「ま、ま…て…ッ、俺、はぁ…ッ」
「…?…お、れは……」
「!!中也!?君、汚濁形態なのに言葉を…!」
大っ嫌いな声がした。
元相棒の、その声が。
しかし、腕の模様は消えていない。
力も、消えていない。
気付けば柳沢は地に伏していて、二代目の姿は消えていた。
恐らく担任がとどめを刺したのだ。
試しに、重力子を投げつけてみれば、柳沢が苦しみ始める。
「…中也、もう何度もそうしているよ」
____中也さん、そんなに無茶しないで…
「……るッせぇな…分かってるっつの、そんなこと」
柳沢の意識がなくなったのを確認して、ふらつく足で浦原さんの元へと歩いていく。
すると、あちらの方から走ってきてくれて、俺はその場で膝をついた。
口から鉄の味がする。
ああ、そろそろやべぇわ…自分でも分かる。
校庭には元の面影はなく、山もほとんどが削れていて。
浦原さんの腕の中にいるそいつを、両腕で思いっきり抱きしめた。
「…ば、かやろ…っ、……俺の心配ばっかしてんじゃ、ねえっつの…ッ」
捩摺の斬魄刀と衝突しそうになった時、それこそ怪我を覚悟していたというのに。
全部護っていっちまいやがった。
汚濁になった俺を護ってくれたのだって、核の中にあったお前の魂なんだろう?
…なあ、そうなんだろ?
「返事、しろって…なんでお前が声、出せねえんだよ……おかしいだろ、?」
「中也、とりあえず先に汚濁を解除しよう…君の命が危うい。そんな状態じゃあ、蝶ちゃんだって…」
「…俺はどれくらい、汚濁を使った?……かなりの時間使ってたんだろ、周り見りゃ分かる…見たことねぇ光景だ、こんなの」
「……死ぬんじゃないかと思ったよ。殺してやった方がいいのかとも思ったけれど…何故だか君は、汚濁状態にありながらも今、自我を保っている」
何のおかげかなんて、すぐにわかった。
太宰に触れられ、吐血が続く。
咳き込みながら血を吐いて、しかしそれでも、蝶にはかけず…倒れもしないよう耐えた。
「………殺しちゃもらえなかったよ俺は…蝶のせいで」
また、助けられた。
また…どうしてこう、何度も何度も俺を助けていってしまう。
そんなだから、お前は…誰よりも優しいんだ。
誰よりも、綺麗なんだ。
誰よりも……生きるべきなんだ。
幸せに、なるべきなんだ。
「…浦原さん…殺してやった方が、いいと思うか」