第2章 暗闇の中で
名付け親。
聞けば聞くほど、あの中也さんからは想像もつかないものなので、失礼ながらも笑えてくる。
しかし、そうか。確かに保護者みたいだ。何かあったらすぐに駆け付けてくれて、時には暴れ回ったりだなんてこともあったけど。
『中也さん、なんかお父さんみたい。』
その瞬間、太宰さんはむせだした。
「お、お父さんか…いやいや、いいと思うよ、お父さん!」
必死に笑いを堪えてるような、そんな声。
電気を消していて分からないけれど、彼とも長い付き合いだ。
用意にその表情は想像出来る。
『太宰さんは、お母さんだね。』
「君のお母さんになれることは、ある意味光栄ではあるが……それでは私は中也の嫁ということになる。それだけは嫌だ。」
『あ、確かに。』
嫁という言葉を聞いて思い出した。
あ、そっか。大切に思ってくれてはいても、やっぱり異性として意識してるのは私だけなんだ。
『……ねえ太宰さん。私、小さかった時よりも成長してる?女っぽくなってる??』
「な、突然何を言いだすんだい蝶ちゃん!?」
『ほら、太宰さんたちって、もう成人してるじゃない?だから、私みたいな子供には、意識する事なんて何も無いのかなって思って。』
そう、太宰さんと同じく中也さんだって、もうとっくに成人している。
加えてあんな仕事じゃ、それこそイリーナ先生みたいな人にハニートラップでも仕掛けられてたっておかしくはない。
「蝶ちゃん…確かに、前まではそうだったかもしれない。君もまだまだ子供だったからね。でも、今の蝶ちゃんをこうして抱きしめてるとね?」
__私も少しドキドキする。
『そうなんですか…え?』
「まだ中也は、成長して更に女の子らしくなった君を知らない。だからきっと、君と出会った時、今までに感じなかったドキドキを感じるだろう。」
『ドキドキ?』
「うん、後は出会ってからのお楽しみさ♪」
上手くはぐらかされたような気はするが、女の子らしくはなってるみたい。
ちょっと成長した今なら、中也さんも意識してくれるかなぁ…
『……そろそろ寝ますね、太宰さん。お休みなさい。』
「うん、いい夢を。明日は頑張ろうね!」
太宰さんの陽気な声を最後に、私の意識は沈んでいった。
「本当、あいつは幸せ者だよ。こんなにも魅力的な子にここまで想われて。分かってはいたが……私の入る隙が無いじゃないか。」