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第27章 飢えて枯れてなくなった


彼が、そこにいた。
そこに来てくれていた。

柳沢の腕から離れられなくて、体に力も入らなくて、怖くて声も出せなくて。

そんな中、柳沢の言葉に形相を変えていく彼に、酷く私は落ち着かされたのだ。

怒って、くれるんだ…心配してくれるんだ、って。

「精々楽しみにしておくんだな、“全員”揃ったその時に、貴様の目から希望を摘み取ってやるから…試しに目の前で口付けでも交わしてみるか」

『ッ、…!?ゃ…、』

「てめ…ッ」

『……っ、!!!』

「っと、…怖い怖い、まさか噛みつかれるとは…」

後で覚えていろよ。
目で、雰囲気でそう言われたような気がした。

血の滴る唇を舐めてから、柳沢は私を無理矢理引っ張って校舎へと連れて行く。

「蝶…ッ、お前…!!」

『…だい、じょうぶ…っ』

「……健気だなぁ、モンスター」

笑顔を作って見せてから、柳沢が後ろを向いたのを確認する。
その瞬間に、保っていた強がりにヒビが入って、私の表情は歪められる。

『ぁ、…ッ…』

震えの止まらない身体で、口で。
彼に、彼だけに伝えた紛れもない気持ち。

『だ、い好き…!』

「!?お前、なに諦め…ッ!!!!」

口ぱくじゃないと…気付かれちゃうと、怖いの。
何されるか、分からないの。

求めるのだって怖いから…こういう時くらい、強がらせてよ。
…貴方のせいで、我慢できなくなっちゃったじゃない。

「…っの、馬鹿野郎…っっ!!!!」

私がそれを伝えると、彼は目を見開いてから、一言言い残して去っていく。

「あっさりどこかへ行ってしまったな…別れの挨拶はすんだか?」

『挨拶?何を言ってるのか知らないけれど、後悔するのはあなたの方よ』

「…まあいい、この檻の中で貴様は無力…あのモルモットにも手の届かない空間で、最終調整を行わせてもらうとしよう」

勿論、中原中也への復讐へ向けた、な。

大丈夫だ、と、必死に自分に言い聞かせた。

私の身体に何をしたところで、あの頭のおかしな人は私を離してなんかくれなかった。
大丈夫、何かされたって…私が怖くなったって、中也がきっとまた頑張ったなって、抱きしめてくれる。

大丈夫…大丈夫、だから。

『……あまり図に乗るでないぞ、小僧が』

「?…何か言っ、た……!!!?その髪は…!!?」

負けるもんか、ここに中也が来てくれたんだから。
私は____
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