第27章 飢えて枯れてなくなった
「一日一ホールずつで我慢して、しかも結局毎日ケーキまた作って…?一週間経ってるのに今度はショートケーキをホールっスか…」
「姫、それ太らねぇの?なあ、もう少し肉つけろよお前マジで」
『うるさい、中也さんのケーキの邪魔しないで』
「あー…でもお前、霊子の補給とか核の修復が始まったからか、前よりちょっとだけ抱き心地良くなったよな」
「「『……』」」
中也本人によるカミングアウトに、時が止まる。
…あれ、もしかして太った?私。
お肉ついたって事だよね?
そういうことよね?
「あー…ひ、姫…?良かったじゃん、中也はこう言ってくれてるし…」
『……ごちそうさま』
「「は…!?」」
「あー…」
食べかけていた分だけ食べきってから手を合わせると、捩摺以外の二人からぎょっとされる。
「姫ちゃん!?どこか調子悪いの!!?」
『悪くない…ちょっと虚退治にでも行ってくる』
「いきなりだなおい!?…って、こんな時間から行かせるわけねぇだろ!!?」
『じゃああれ、狙撃の訓練…』
「それなら俺もつい『中也さんは来ないで!!!』な、ッ!!!?」
斬魄刀を手に取って、扉を作って家を出る。
堂々とした家出…報告付きの。
しかし行先はポートマフィアの拠点ではない。
『…いた。ちょっと相手してよ、“殺せんせー”』
「にゅ!!?せ、せせせ先生今アルバムを『ちょっとだけちょっとだけ』どうしたんですかいきなり!?中也さんは!!?」
椚ヶ丘中学校、旧校舎。
正確には、殺せんせーのいる場所だ。
『マッハ二十を能力使わずに相手してみようかと思って…あとほら、そしたら一緒に筋トレできるし、汗もかくしいい運動になるし』
「捩摺さん始解してまで向かってこないでえええ!!?」
『大丈夫、水は使いませんから…!!』
「ちょっ、ちょっとまって蝶さん!せめてアルバムに被害を出さない場所、に…!!!」
他愛もないやりとり。
そんな中、感知した…“気配”。
咄嗟に壁を展開し、自身と殺せんせーのからだを護るようにして屋外…できるだけ遠くへと避難する。
しかし、それでも足りなかった。
扉を作る時間を割いてでも、別の場所へと移動するべきだった。
視界が光に覆われたその瞬間、身体中が溶けるような熱に晒されて…
臓器を残した私の肉体が、気付いた時には溶けていた。