第27章 飢えて枯れてなくなった
『手…、緩くなってる』
「!……いいのかよ」
『今更。酔わせなくたって、喜んで愛してもらうのに』
中也さんになら。
そう続けられた声に、抱きしめる腕に力を入れ直した。
敵わねぇ…全然敵わねぇ。
「なんで酔い、無理矢理覚ましたんだ?」
『次説明する時に、中也さんが遠慮しちゃうかなと思って』
その返事を聞いて、前髪をかき分けて額に口付ける。
それからまた唇に柔らかく口付けを落とし、少女の愛おしそうなその瞳を見つめた。
「俺が、お前に遠慮?…すんに決まってんだろ、相手はお前なんだから…まあ、今はするつもりねえけど」
『!…、っ…ち、中也さんてそんなに手早かっ…ぁ、…ッ』
「こら、布団で隠すな。せっかく綺麗なのにもったいねぇだろ…顔も隠すの禁止」
『で、でもさっきもういっぱい…、ぃ…っ…あ、っぅ…♡』
鎖骨から舌を這わせて、蝶の胸を愛撫していく。
頂きと弱点を刺激しないよう、撫でるように。
キュ、と握っていた布団を離させて、俺の肩へ手を置かせる。
震える指が、未だおさまらない感度の高まりを物語っていた。
「そうだな、いっぱいしてくれたもんなぁ蝶…でも俺、今日はまだ“蝶にしか”構ってやってなかったろ?」
『…ッ!!!!』
俺の言葉にビクッと肩を跳ねさせてから、からだを固くさせる。
それからようやく俺とまた目を合わせてくれて、唇を引き結んでから、その本性を顕にしてくれた。
髪の色が艶のある黒色へと染めあげられ、瞳は俺と同じその色に。
「やっと出てきた……こっちでは抱いてやれたことねえもんな」
『…、わ、ぁの……こ、こういうのしたことな…っ』
「へぇ、姫の方が恥ずかしがり屋なんだ?…慣れてなくて?」
『!!!き、ききき着物はだけ…っ、ぁ…ちゅうやぁ…ッ』
涙目になりながら顔を真っ赤にする蝶…もとい紅姫。
思い起こされるのは、初めて蝶の身体にこういう触れ方をしたその時のこと。
「…姫の初めても、もらっていい?」
『い、っ…!!?…な、…な、んで…、?』
「別人じゃあないのは分かってるけど、お前も一人の女だろ?蝶の意見も姫の意見も、ちゃんと聞いて合意の上で触れたいんだよ」
『……ゆ、っくり…して…?……もう、すごすぎるのは…し、死んじゃいそうになるから』
「…わかった。後は…なんて呼んでほしい」
『!……蝶……………“ちゃん”』