第27章 飢えて枯れてなくなった
アルコールの成分に弱いとは知ってはいたが、まさかそれにそんな効果が期待されるとは思っていなかった。
捩摺の姿が消えてから、葡萄酒も用意して、それから少女の装飾品を外していく。
それだけでも昂ってくるものだからどうしようもない。
それに、俺からの愛情だって?
元から感度が良すぎただけじゃなく、そこだったのか?おい。
全くもって、やってくれる。
小さな唇に、自分のそれを重ねる。
もう何度目だろう、意識の無い蝶に口付けをするのは。
俺の頭のネジが飛んでる?
そんなもの、蝶を一目見たその瞬間に、ネジなんてもの無くなってるさ。
本人だって知らないはずだ、どうして日中、“たかだか数回ごときの”口付けで我慢していられるのか。
自傷行為をすることなく己を満たしているのか。
付けられたはずのない所、付けられていないほどの量の印が、咲いているのか。
『…、…ふ……ぅ…』
「……」
お前の唇が誰にも奪われていなかったその頃は、唇だけはとそれはそれは我慢に我慢を重ねていた。
しかしだ、お前は子供過ぎると言い続けていたわけだが…俺の中では、初めからお前はずっと女だった。
誰が耐えられるんだ、毎日毎日、こうも密着して同じ布団の中で就寝させられて。
俺はそこまで優しくないし、できた人間でもなければ大人じゃない。
思春期舐めんな…男舐めんな。
お前への愛も欲望も、文字通り並大抵のものなんかじゃねえんだよこっち“も”。
最初の頃は、少し怖くなりもした、決して綺麗とは言えないこの行為。
再会して、初めて唇を交わしたその瞬間までだって、ずっと唇だけを避けて続けていた、勝手なキス。
お前が寝ている時だけの…そばにいる俺だけの、注ぎきれないお前への愛情を、刻みつけるように与える行為。
背徳感も勿論あるが、そんなものよりも物足りない。
こっちはお前に溢れてやまない愛を与えきれなくて、そういう意味で飢えてんだ。
起きてこられたってもう罪悪感も何もない。
『ハ…、…ふッ…、ん……』
何度もゆっくりと口付ける内に、いつものように回される蝶の腕。
それに頭を撫でて、そのままそれを続けていく。
もしも寝ている間に俺がキスをしているなんてことがあったら、嬉しいだと?
あほかお前、とっくの昔から襲われてんだよこの男に。
「…ッ、…クソ、……なんでんな嬉しそうな顔すんだよ、馬鹿」