第27章 飢えて枯れてなくなった
「ま、生半可な気持ちで付き添ってる野郎なら姫にやらせる前に俺がやろうと思ってたが?生憎姫は見る目がちゃんとあったわけだし…なにより、この姫が自分を裏切ったら“殺す”とまで言い切るに値する人間だなんて、よっぽどだぞ」
見てれば分かるだろ?
その問いには、もう迷うことなく頷ける。
生命というものがどういうものなのかを知っている…だなんていうレベルのものじゃあない。
こいつの言う殺すというそれは、憎しみや協定のようなそれだけじゃあ収まってなんかいなかった。
俺もそうだろうと予測はしていたし覚悟も決めていたが、より確かなものに変わったのだ。
何よりも大切だった者を自分で殺した事があるから、分かるんだ。
殺した者のことを背負って生きるという道を選んででも、俺を手離したくないんだ。
「…可愛いよな。それに、やっぱり理由も何もかも綺麗な奴だ」
「……あんた、やっぱり相当頭のネジ飛んでんな」
「そうか?…こんなに誰かに愛されるような存在じゃあなかったはずだからな、俺は。もしも俺が蝶を裏切ったとしても、一緒に大切に想って生きてくれるなんて…そんなこと言えるとか、男前すぎるだろ」
「やっぱ相当な変態だ。そこまで一途過ぎたら流石に引く」
「お前の主だってそうだろうが」
「姫以外にいたら引くんだよ…っと、安心させすぎたか?霊力の供給が途切れた…マジで普通に寝てる」
その言葉に目を丸くする。
無意識のそれも、無くなった。
唯一、自分とい続けてくれた捩摺を手放せなくて、無理矢理切られでもしなければ途切れなかったはずのそれが。
「…んじゃ、まあ俺も自分でこっちにい続ける必要ねえし?また必要な時は呼べや、どうせ日中はよく呼ばれるだろうが」
「…そのままお前が消えたら、お前の主がこれから酷ぇ辱めにあわされるが?」
「程々にしてやるなよ?ぶっ飛ばしてやれ」
「手前の主だよなぁ…?」
「愛情で溺れさせて酔わせてやれっつってんだよ。それくらいされた方がいい、それでも足りねぇんだから……ああ、いいこと教えておいてやるよ」
捩摺…蝶の魂を持つそいつが口にした、いいこととやら。
こいつもえらく俺と気が合うらしい。
「姫と姫の体にとっての一番の媚薬は、酒と中也からの…そして中也への愛だ。…めいいっぱい可愛がりながら、口からでも肌からでも飲ませてやれ…あと接吻な」