第27章 飢えて枯れてなくなった
「なんで泣いてんだよ…何回泣いたら気が済むの?お前」
『泣いて、ない…ッ、しゃっくり…』
「嘘つけ泣き虫。俺と会う度泣いてどうすんだよ?まあ、お前の大好きな海燕さんに会えて嬉しい気持ちはよぉく分かるが」
志波海燕本人と似ているかどうかは分からない。
しかし、本人にしても捩摺にしても、こいつを大切にしてきていたことに違いはないのだろう。
『…、許さない、で…っ』
「……許すも何も、そもそも何にも怒ってねぇよ」
『な、…だ、っ…にか、いも…ッ』
二回…殺した。
その手で、殺した。
自分の手で、自分の斬魄刀で。
殺したんだ、そんなに大切だった人を。
救うために致し方なかっただけなのに。
それを蝶自身も分かっているはずなのに。
それでも自分が許せない、いつまで経っても許せない。
力を使ってやれなかったから。
たった独りだった、そんな時の、唯一自分を明るく照らしてくれた相手だったのに。
「二回も助けてくれたんだよ。おかげでちゃんと都のところにいけた…こうしてお前にも会えてる」
『!!!、ほん、と…?みやこさ、…会え…??』
「!…ああ、本当だ。分かるだろ?その気持ちは」
都。
突然出されたその名前に聞き覚えがほとんどないのだが、捩摺の言葉によって、蝶の涙が止まる。
そして俺の手に自分の手を合わせて、指を絡めて確かめるようにきゅ、と握る。
まるで、研究所で連れ去った日のように。
それに返すようにして握り返せば、ゆっくりと顔を上げ、蝶は俺の目を見つめてきた。
『…じゃ、あ…海燕さん、幸せ…?…わた、し…幸せに、できた?あなたのこと…何も、返せなかっ「お前が今、俺と同じ幸せを感じられるようになってくれているのが、俺の何よりの幸せだよ」っ、!!!』
自分の大切だった人の死へ対する罪悪感。
つきまとって離れなかったそれが、その死者の言葉以外のどんなもので払拭されるだろうか。
幸せを感じるのが怖かった。
だから、そんなところまで怖かったんだ。
『……幸せで、いい…?』
「…幸せにならないなんて道に、俺の心まで道連れにしないでくれよ?」
『ぁ…』
何かの欠片が、コロンととれたような。
そんな間抜けな声を出して、少女は一言、“啼いた”。
「…ちゃんと幸せにしてくれよ?俺のことも」
「……任せとけ」
____中也に、幸せにしてもらう