第27章 飢えて枯れてなくなった
「あぁらら、始まっちゃってる…蝶ちゃん!!!来ましたよおお!!!おめで『久しぶり喜助さん』なになになに!!?なんでそんな中原さんがギュッてしてるの!!!?」
『いつもの事よ。あと、いい加減中也のこと中原さんって呼ぶのやめない?私も一応中原なんだけど』
「……中也さん?…いやほら、ボクあんまり名前で呼ぶ人いなくって」
「…まあいいんじゃねえか?娘の旦那なわけだし」
中也の一言にピシッと固まる喜助さん。
まあその通りなのだけれど、今になってもいい反応を見せてくれるものだから面白い。
「も、もう…ボクだって渋々なんですからね?」
『渋々なの?中也こんなにいい人なのに』
「そっちの事情じゃないの!」
『まだ好きなの?一途…早く誰か見つけた方がいいよ喜助さん。まあ私の納得いく人なんてそうそういないでしょうけど』
「姫ちゃんだって好きなんじゃない…」
ボソリと聞こえたそれは知らん振りをした。
いいじゃない、主だし。
どの道そういう関係性に発展せずとも、深い関係なわけだし。
「あれ、そういえば捩摺さんは?」
今日は具象化してないの?と問う喜助さんに、あそこ、と一斉に指を指す探偵社の皆。
それに従って喜助さんが目をやると、部屋の隅で甘いものを食べながら蹲り、谷崎さんと敦さんに慰められている様子の捩摺が。
簡潔に言うと非常にジメジメしている。
関わりたくないレベルで。
『私が中也にばっかり構ってるから拗ねてるの。だから執拗いって言ったらあそこでキノコ栽培始めた』
「い、言ったんスか…」
『だって手繋ぐの一つにも騒ぐんだもん。何なの捩摺、私にそういう気があるとでもいうわけ?』
「…」
「「「「………えっ」」」」
私の一声に言葉を失った捩摺。
そしてその様子に、私の方へと向けられる探偵社の皆々様方からの視線。
「…蝶、あんたって本当…罪な子だよ」
「蝶ちゃんも鈍感だよねぇ、誰かに似て…」
「いつ気づくかと思ってたけどそういう所馬鹿だよね」
「ひ、ひひ姫ちゃんもしかして気付いてなかったの!!?」
『?………へ、?』
与謝野先生、太宰さん、乱歩さんと続いて最後の喜助さんの言葉に思考が停止した。
『…捩摺?』
「!!…、ンだよ」
『…もしかしてそれで海燕さんに似せてたの?』
「悪いか!!!」
全く、斬魄刀はやはり主人に似るものだ。