第27章 飢えて枯れてなくなった
「分かった、そういう事なら喜んで席を確保させてもらおう。来歴や籍などは気にしないでくれ、こちら側で処理は済ませる」
『いいんですか?結構なこと要求しましたよ?』
「大丈夫だ、君の活躍は防衛省にも知れ渡っている。実力もある…何より俺が信頼している。そのくらいの誠意は見せたい……というのと、君のお願いはやはり大して無理なお願いではない」
くす、と今度はこちらが笑われるのだが、やはりまだ気がついていないのだ、この人は。
『だって、ちょっとからかいたくなっちゃいましたから』
「そういえば、さっきもそんなことを言っていたな?…俺、からかわれてしまったのか?全く自覚がないのだが」
『そうですね…怒らないでいて下さるなら、ヒントくらいなら教えられますよ』
「?ヒント…?……君は俺に怒られるようなことはしないだろう」
『でも烏間先生堅物だからなぁ…』
「分かった、分かったからヒントを教えてくれ」
まあ怒られるような内容じゃないのは確かだけれど。
この人も随分と冗談が通じるようになったものだからこそのからかいだ。
『じゃあヒントです。今の一連の流れ、私の担任の先生に報告してみてください…そしたら多分分かります』
少し首を傾げた烏間先生。
そう言ってから壁を消せば、分かった、今から聞いてくる。と返事が返ってくる。
『では、私はこのあたりで。探偵社で合格祝いだってまた騒がれちゃってるんで…これからもよろしくお願いします、烏間先生!』
「…ああ。こちらこそ、よろしく頼む」
烏間先生…烏間惟臣さん。
私をこの学校へ…E組の皆や殺せんせー、イリーナ先生というかけがえのない人達に巡り合わせてくれた、大恩ある人。
私の事情を少しずつ知っていってもらったものの、それでもいつだって、私を一人の生徒として見てくれた。
私を一人の人間として、真っ直ぐに見続けてくれていた。
恩には恩を、返したい___
「おや、烏間先生。どうされました?」
「…先程、蝶さんを防衛省へスカウトした。見事に依頼という形をら取られてしまったのだが…人生を捧げるような選択を、あっさりと飲まれてしまったんだ。それに、俺をからかっているんだとか」
「ほほう…本当にまだ聞いてなかったんですね?」
一枚の紙が手渡される。
中原 蝶
進学先:椚ヶ丘学園高等部
夢:防衛省特務部