第27章 飢えて枯れてなくなった
目を見開いて目の前の人物を見る。
読心術を使っても、誠心誠意心からの言葉であることは明白で、まさかそんな誘いが来るだなんて思ってもいなくて、どう返すべきか返答に悩む。
「勿論無理を言っているのもわかっている、君は武装探偵社もポートマフィアも、どちらも成し遂げるつもりだろうから。…しかし、それでも俺は、君のような“人”が、人を護るための権限を持つべきだと、そう思う」
私の戦闘技術が…能力が。
そういった話じゃないことは、目を見ればすぐに分かることだった。
私は真っ直ぐに見られるのが苦手だ。
全てを見られてしまうのが…“慣れていない”から、どう対応すればいいのか分からない。
この人が見ているのは、私という能力を持った器だけじゃなく、私という人格なのだ。
ここまで生き抜くしかなかった私を…絶望した先に存在するこの私を見て、尚そう言ってくれている。
『…それは、烏間先生からのご依頼でしょうか?それとも、お願いですか?』
「?いったいどういう…」
『簡単な話です。私は、依頼を引き受ければ…信頼出来る相手からの依頼は、やり遂げます。お願いだって、できる限り叶えたいとは思います…違いは、私になにか心変わりがあっても、貴方という人物が私の行動を制御する権利を持つかどうか』
そして、見返りを示すか示さないか。
このような取り引きはあまりする質ではないが、今は相手の方から無礼講だと言ってくれている。
私はお願いされている身。
それに相手は烏間先生だ、私はどちらかというと、今のような関係性が一番居心地がいい。
「…見返り、…報酬というやつだな。確か、今回の依頼では学校へ入学する権利だったか」
『防衛省に勧誘されてて何大層なこと言ってんだって話ですしね。でも、烏間先生…烏間さん、肝心なことに全然気付いていなさそうだから、ちょっとからかいたくなっちゃって』
くすくすと笑うと面喰らわれる。
どういう意味なのか、やはりまだ分からないらしい。
鈍感というものはやはりこの人の最大の弱点だ。
「…最初は確か、学校へ入学するのは“義務”で、報奨金や継続的な依頼料で手を打つ予定だった……それが、君本人の意思によって報奨金は無しとなり、学校生活という義務が報酬にされてしまった」
全く、困った人だ…何を報酬にすれば納得していただけるのか、皆目検討がつかない。