第27章 飢えて枯れてなくなった
「……何を、と言われてもな」
『…地球が滅ぶ確率は一パーセント以下…だからほとんど危険じゃあない。みんなで笑ってハッピーエンド…そんな上手い話を、私は今まで二千五百年近く生きてきた中で、ただの一度もこの目で見たことも、この耳で聞いたこともありません』
宇宙の研究で、殺せんせーの体が爆発する可能性がどれほどまでなのかは検証された。
しかし、それでも政府から“殺さなくてもいい”とお達しが来ることがなければ、宇宙空間や他の機関において、反物質の研究が止められることも未だにない。
それはどういうことかというと。
『政府は、殺せんせー…元死神であるあの超生物を、まだ殺すつもりなんでしょう?……私は元々烏間先生に雇われた身です、邪魔をするつもりも、貴方の地位を危険に晒すようなことをするつもりもありません』
「…参ったな、流石と言うべきかなんと言うべきか……俺の分かることは、何も無いというのがその問いに対する答えになってしまうのが、申し訳ないのだが」
『!…なるほど、今はここの指揮官の権限しかないんですね?……それなら、これ以上探りを入れるのはやめておきます。ただ先生…私の仕事は、卒業するまでは契約期間の内ですよね』
「そうだな…俺は、君が入学してからこれ以上にないほどの信頼を寄せている。気負わせたくはないが……この先、俺が生徒達…そして君の味方につけなくなる時が来ることがあるかもしれない」
このような話を、少し前にも聞いた気がする。
少し含みのある言い方を、私以外の子にもしていたような。
「だが、それでも君達を心から憎んだり、どうでもよく思ったり…そんなことは、ここまで信頼させられてしまうともうできない」
『…もしもの時は、どんな手段も厭わないですよ。私は』
「だから君に任せられる。…ここからは俺の…烏間惟臣という一人の、ただの人間の話として聞いてほしい」
思いもよらない烏間先生からのお願いに、少し驚きながらも何ですかと返す。
すると、彼は私の目の前で正座をし、私の想像を超える話を持ちかけてきた。
「無理を言っていることは重々承知だ。…ただ、今回のこの件がどのような結末を迎えても…その先の未来を、君はこの世界で歩んでいくのか?」
『…中也が生きてる限りは、そのつもりですよ』
「……中原蝶さん。…俺は、君を防衛省の特務科にスカウトしたいと思っている」