第27章 飢えて枯れてなくなった
バレンタイン…私の命日であり、尸魂界の時間では喜助さんの誕生日に当たったその日が過ぎて、早数週間。
真子や喜助さんは尸魂界へと戻り、通常通りの生活…を送りながら、数日に一度の頻度でこちら側へと顔を覗かせる。
喜助さんはともかく真子に至っては隊長なのに大丈夫なのかと思いつつも、他の面子もたまに来てくれて嬉しかったり…
捩摺は基本的に具象化したままだけれど、斬魄刀自体は左腿に付けているホルスターを改良し、そこに帯刀することに。
そのまま腰に帯刀しても良かったのだけれど、個人的にこのホルスターを使いたかった。
「ふむ、流石は蝶さん…あっさり首席で通っちゃいましたねぇ」
『あれ、私だったんですか?てっきり、あと一人か二人かいると思ってたんですけど』
「おや…ご名答!あともう一人、このクラスから赤羽業君が」
隔離校舎の職員室で、殺せんせーと個人面談をしながら合格通知を拝見した。
一番最初に中也と確認はしたのだけれど、それでも一番というのはまあ嬉しいものだ。
『ふふ、そっか…高校に行ったら手強いなぁ、浅野君も』
「おや、少し怖気づいてますか?貴女ともあろう方が」
『全然?ただ、あの子達に負けると癪だから、余計に気が抜けなくなってきたなって』
「気を抜いてくれないから末恐ろしいんですよ…で、蝶さん。もう一度聞かせてください。貴女の…将来の夢は?」
将来の夢。
夢だなんて言葉をここまで現実的に考えられたのなんて、いつぶりの事なのだろうか。
尸魂界でまた死神をする?
それとも、喜助さんの開発のお手伝い?
こっちの世界で開発に没頭する…なんてのもいい。
でもまあ、それは趣味でもやってきた。
『多分近い内に叶えちゃいますけど、いいんですか?将来の夢にしちゃっても』
「はい、構いません。貴女のやりたい事ならなんでも」
『…私、やりたい事が一つ増えたんです。どっちつかずに見えちゃいますけど、武装探偵社も…ポートマフィアも、皆がいるうちは両方とも』
皆がいるうちは…私がこの先、死ねなかったとしても、恐らくもう私はこの世界から離れることはないだろう。
中也がいるなら、私がこの世界を離れる理由はどこにもない。
「そこまでは以前と同じですね…もう一つ、というのは?」
『まだ相談もしてないんですけどね』
私の夢に、やはり先生はこう言った。
君に合っている。